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■小説
サメいじり。〜刺客001:沢田綱吉〜






【サメいじり。〜刺客001:沢田綱吉〜】





――コンコン。
ツナはある部屋の扉をノックした。間髪入れずに開いた扉から見えた姿に萎縮する事も無く、開けて貰えた事への礼に軽い会釈を返した。

「よぉ、よく来たなぁ。まあ、何もねぇところだがゆっくりしてけや」
「あ、お気遣いなく……」
(てか、ホントに何もね――ッ!!)

簡素な室内の様子を見て、何故だか妙に納得した。日本人の“何もない”と外国人の“何もない”って、全然違うんだ……。


「いつまでもそんなとこ居るなよ、奴等が入って来る。早くそこ閉めろ」
「えぇっ、奴等って誰!?」
「奴等は奴等だぁ!!チィ……おらぁ!!」

痺れを切らしたスクアーロ、戸口へ立ちんぼなツナの腕を掴み手荒くベッドへ放り投げ、素早い手付きで扉の鍵を閉めた。その背後では、綺麗な放物線を描きながらツナはベッドへ着地する。

「うわ、――ぶへっ!!」
……顔面で。



「う゛お゛ぉい、だらしねぇ声出してんじゃねーぞぉ!!」
(誰のせいだよ!!……いってー、鼻潰れたかも)

「すいません……」
「まあいい」
(よくねー!!おまえが決めんな!)

「おい、何か飲むかぁ?てめーはまだガキだし紅茶とかがいい?」
「あっ、うん」
「ミルク入れとくかぁ?」
「お願いします」
「ん、了解」

カチャカチャと食器を弄る音がする。ツナはさすっていた鼻から手を離し、ベッドに座り直した。ふと手元を見ると出掛け際、母親に持たされた菓子折りの袋に皺がよっている。中身潰れたかも。……さっきのアレで。

「あの〜……」
「ん?どーしたぁ沢田綱吉」
「これ、母さんがスクアーロに持ってけって」
「悪ぃなあ、日本人は気が利くぜぇ……開けてもいいかぁ?」
「今?いいけど、」
「ちょうど茶ぁいれたんだ、食おうぜ――これ。それに、手も付けてねーのに礼なんざ言えるかよ」

(見た目によらず律儀だよなぁ、こーいうとこ)
先程いきなりぶん投げられて落ち込んでいたスクアーロの株が上昇した。



「まぁ飲めや」
「ありがと」

二人でベッドに腰を下ろしながら、其処へお菓子を広げてティータイム。多分これ、オレが此処に座ってたからなんだろうなぁ。

「……あ、これうめぇ。何だぁこれ」
「これはヒヨコまんじゅうっていうお菓子だよ」
「へぇー……」

もぐもぐと咀嚼する一方で、角度を変えながら物珍しそうに眺めている外人を前に、ツナも同じくそれを頬張る。
(自分で持って来たのに食っちゃったよ……でもまぁ、気に入って貰えたみたいでよかった。母さんは何も知らないからこれ寄越したんだろーなあ……暗殺部隊の人にこれは渡せねーよ、普通は)

何となく、母の凄さを感じるツナ。




「あれ?もう食わないのか?」
「ああ、1つでいい。残りはうちの連中で貰う」
「そっか」
「うまかったって伝えとけぇ」
「うん、ちゃんと伝えとく」

「そーいや、おまえ紅茶はよく飲むのか?」
「まぁ飲むかなー、ケーキには紅茶がいいかも。コーヒー苦いしさ!」
「やっぱりなぁ」

思った通りだと、スクアーロはニヤリと笑いカップを優雅に傾けた。
その姿を眺めていると、ハッと思い付く。


「あ、そうだ。なあスクアーロ」
「んぁ?」
「おまえミルクティーとロイヤルミルクティーの違いって知ってる?」

その言葉を聞いてガクッとスクアーロの頭が揺れ、危うくカップを落としそうになるも何とか堪える。それから部屋の周りの気配を探知し、周囲に人が居ない事を確認した後ベッドへカップを預けた。

「う゛お゛ぉい……今の話はてめーとオレ、二人の間に留めとけぇ」
「……え?」
「いいかぁ、間違ってもボスになんか知られるな。ベルもダメだ」
「えっ?」

真剣な表情で肩を掴まれ、素で狼狽える。
一体何が。


「……よく聞けぇ、沢田綱吉。まず、ロイヤルミルクティーなんつーモンは存在しねえ。ロイヤルなんて言って持て囃してんのは、残念ながらジャッポーネだけだぁ……こんなこと奴等に聞かれてみろ、世間知らずとバカにされるだけじゃ済まねえ。ボスはきっと怒り狂うだろう」
「えぇ――ッ、そうだったの!?」
「悪いことは言わねえ、長生きしたけりゃ教養をつけろ」

……大変なことを聞いてしまった。何となく思い出した疑問をぶつけたらとんでもない返答が返ってきた。
でも、確かにそうだよな。オレみたいな子供に負けたなんて許せないだろうし、オレだってまだ死にたくねーし。……本当に気を付けなくては。


「なんかごめんな、その……気を遣わせちゃって」
「いや、気にすんな。奴等が居る時に聞かれなくてよかったぜぇ」

その後は何だかお互い気まずくなって、程無くして解散になった。
帰り際、スクアーロの連絡先をゲットした。





その日から、オレ達は連絡を取り合うようになりました。


-END-








第一回目のサメいじり。今回のスクアーロさん、精神的にストレスを受けたようです。(笑)
好きでも嫌いでもなかったツナの仰天発言に「何とかしなければ」と思い至る、世話好き兄ちゃんスクアーロ。何だかんだ普段から部下の世話も焼いたりする為、放っておけなくなってしまいました。

次の刺客は誰だろう。

――2009.10.09.



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