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サードニクス-夫婦の幸福-。【2】




「Buon compleanno.」
「――ッ、」

甘く囁かれた言葉の意味を理解する迄に時計は三度も鳴いていた。漸くと自身の誕生日が今日であると理解して、改めて主を想った。
二人きりで気兼ね無く過ごせる様にと旅館を貸し切って、自分を連れ出してくれたXANXUS。浴場でも甘く溶かす様に愛してくれて、美味しい酒も沢山飲ませてくれた。0時丁度に、一番最初に祝ってくれた。
こんなにも沢山のモノを与えてくれる極上な男は、他には居ない。

――居るはずが無いのだ。


「ありがとなぁ、XANXUS……嬉しいぜぇ、」
「そうか」
「嬉し過ぎて……なんだか変な気分になってきた」
「ほう、……それはどんな気分だ?」

「……エロい、気分」

そう言って立ち上がったスクアーロは、きっちり着込んでいた浴衣を乱しながらXANXUSの傍らへ屈み込み、浴衣の隙間から手を滑らせて兆しの無いそれを妖しく撫でた。覗き込む様にXANXUSを見詰めて薄く微笑むと、浴衣の前を広げて顔を沈めて下着の上から一度口付けた。

「口でしても怒らねえ?」
「好きにしろ」
「ん、……今日はすげえ愛したい気分だからなぁ……もうイけそうだぜ」

「はっ!このエロザメが」

ゆっくりと丁寧に下着から取り出して、リップ音を立てながらキスを施しては啄んだ。それから根元から先端まで舌を這わせて唾液を絡ませた後、漸くと口内へ呑み込んでいく。咽喉を上手く使いながら、次第に膨張していく彼の分身を懸命に愛した。室内に湿った音が漏れ浮かぶ。


「ん゛ぅ……はぁ、好きだぁ……好き、だ」
「“これ”がか?」
「違う、おまえが好きだ……堪らなく、愛してる……愛してる、」

「これじゃあどっちの誕生日かわかったモンじゃねーな」

笑みの滲む声音と優しく頬を包む温かな掌を受けて、スクアーロは心地良さそうに目を細めた。苦し気に吐息を溢しながら、手と口を使って巧みにXANXUSを追い詰めていく。馴れた行為にも飽きは無く、愛おしさばかりを持て余す。スクアーロは口内から猛った雄を取り出して、強請る様に頬擦りをしながら最愛の主を見上げた。

「飲み干したかったんだけど、なぁ……欲しくて我慢出来なかった、」
「来い」
「ん゛ん……はあっ、あ゛あァ……――う゛あっ、ン、」

了承を得て気遣う様にXANXUSを押し倒すと、その腰へ跨がった。こうなる事がわかって下着を着けていなかった為に、はだけた浴衣から立ち上がった分身が顔を出している。そんな事はお構い無しにと、スクアーロは主のそれを呑み込むべく腰を落としては切なく啼いた。身震いをしながら根元まで呑み込むと、上下に腰を揺らして快楽に乱れ始めた。

「いい眺めだな、カス」
「んっ、ン……はぁっ、あ……XANXUSッ、」
「酒のせいか?それとも本心か……そんなてめえも悪くねえ、」

揺れる長い前髪の隙間から覗く瞳は焦がれるままに最愛を求めて止まなかった。“もっと、もっと”と視線で強請りながら、欲望のままに妖しく腰を揺らしては悶える。そんなスクアーロの姿を見守りながら、XANXUSは微かに息を詰めた。もう暫く己の上で乱れる姿を見詰めていたかったが、本来の気質が災いしてXANXUSは上体を起こした。――黙って見ているよりも己の手で乱したいのだ、と。


「はっ、布団なんざ要らなかったな……、」
「キス……はあっ、XAN……」
「わかってる」

「ン、――ん゛ん……はっ、ぅ……」

スクアーロを押し倒して衝動のままに貫けば普段と同じくキスを強請る。苦しいとその顔は歪んでも、回された腕はもっととXANXUSの頭を掻き抱いて施される口付けに応えた。舌を捩じ込み口内を侵しながら、XANXUSはスクアーロの髪を纏め上げている簪を引き抜いた。揺さぶられる度に乱れながらに広がっていく白銀を眺めて、愉悦を感じた。
やはり“これ”はこうでなくては――XANXUSは今一度そう思った。






その後も幾度も求め合い、幾度も欲を互いに吐き掛けた。欲に濡れた二人の情熱が冷める頃にはすっかり朝日が顔を出していた。濃密で甘美な時間を過ごし、布団の中で肌を寄せ合いながら穏やかな時間を過ごす。

「XANXUS、もう支度しないとじゃねーかぁ?」
「まだいい」
「ん、」

宥める様に髪を撫でられて、スクアーロは彼の腕の中で大人しく身を任せる。頬を寄せて瞼を伏せると、忘れ掛けた睡魔がやってきた。そんなスクアーロに気付き、優しく頬を掬って見せた。

「少し寝ろ、起こしてやる」
「おまえは?」
「後で寝る。いいからオレの言う事を聞け」

「ん゛んー……」
「おやすみ」

『でも……』と唸り声を上げるスクアーロの瞼へ唇を落とし、有無を言わせぬ声音で一方的に挨拶を交わす。一瞬唇を歪めたスクアーロは「それは反則だ」と不貞腐れた様に呟いて、眠りに落ちた。
寝入ったばかりのスクアーロの髪を飽きるでも無く撫でては、見馴れた寝顔を見詰め続けた。腕の中に収まる愛しい体温と、安堵を誘う微かな寝息……込み上げる想いを確かめながら、壁掛けの時計を仰ぎ見る。
出発まではまだ時間が有る――それまでこいつの寝顔でも楽しむかと、微かな笑みを溢した。心地良さそうに穏やかな寝顔が胸を充たしていく。

たまにはこんな日も悪くない。








来年も変わらず共に過ごせる様にと、願いを掛けて。
色褪せる事の無い想いを刻む。



細やかな、二人の幸福。


-END-





無駄に長くなったスク誕。遅くなり過ぎてごめんねスクアーロ。
このお話ではボスの巧みなエスコートぶりが明らかに。いい男とは得てしてそういうものです。

タイトルは誕生石から。2人でサードニクスをつけたらいいと思います。

――2010.03.15.

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