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片羽フラクタル
6

白石は焦っていた。戦況はどうやら押されぎみらしい。最前線へ加勢に向かった謙也からの伝令も来ない。真田と二人で陣地付近を守っていたが、待つのはもう限界だった。

白石「こないに待っても連絡が来んのはおかしい。俺が様子を見てくるわ」
真田「ああ、頼んだぞ」

馬に乗り前線へと一直線に走らせていると、味方の兵の叫び声が聞こえた。それも一人ではなく、大勢が助けを求めている。白石は方向転換させ、声が聞こえる方に急いだ。

白石「な、なんやこれ…」

そこはまさに地獄絵図だった。濃い血の匂いが充満し、馬はこれ以上近づきたくないと言わんばかりに顔を背けて足を止めた。仕方なく馬を降りて先へ進む。地面はさらさらの砂のはずだったが、血と脂とで泥のように固まっていた。

兵士「し、しし白石さんっ!!」

一人の兵士が涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら走ってきた。その体には血糊がべったりとついている。

白石「どないしたん、これは」
兵士「ば、ば、化け物だ、奴は化け物だ!」
白石「落ち着き。あまり動いたら傷が開いてしまうで」
兵士「駄目だ…俺たちもう終わりだ…」

虚ろな目の兵士はそう呟くとその場に倒れた。慌てて抱き起こすが既に事切れているようだった。
兵士を寝かせて白石は兵士が逃げてきた方向を睨み付ける。たとえこの先に待つのが化け物であろうと、大切な仲間をたくさん殺されて黙っていられるほど白石は冷淡ではなかった。
剣を構えて血の道を進む。
そして、その先に確かにその化け物はいた。返り血に染まった漆黒の服を身に纏い大量の死骸と血の海の中、一人佇むその化け物は白石を見た。

白石「…え」

自分を見つめる黄金の瞳は、白石が昔、そして今も恋い焦がれていたそれで。
目の前の化け物、冷泉零は白石に体を向けて確かに微笑んだ。

零「お久しぶりっスね、蔵ノ介先輩」

幸村が告げた予期せぬ脅威という言葉が頭をよぎった。


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