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片羽フラクタル
6

あきな「千歳、今の戦況をどう思う?」
千歳「え?あー、まぁけっして良いとは言えんね」
あきな「最悪といっても過言ではないわ」

憎々しげに綺麗な顔をしかめる。先程から戦場から入ってくる情報はどれも良いものではなかった。多少の苦戦は想定していたが、敵はエンティア討伐のためだけに集められた烏合の衆。戦力が倍近くあるエンティア騎士団がここまで押されるとは誰も思わなかっただろう。

あきな「しかも、さっきから前線のブン太たちからの連絡がないのも気になるし…何かあったのかしら」
千歳「物資云々の話じゃ無くなっとうね」
あきな「敵の動き方を見るに統率はとれていないはず。つけこむ隙はいくらでもあるはずなのに…」

広げられた地図に戦場からの連絡を頼りに敵の布陣を書き入れる。敵の動きはバラバラで、基本的には人海戦術をとっているらしく中央に大群が固まっていた。

千歳「随分真ん中に固まっとるばい」
あきな「所詮は素人だもの。戦場、しかも騎士団が相手となれば流石に畏怖して集まりたくなるのは仕方ないわ」

あきなが地図を睨み付け、考え込むように項垂れた。

あきな「問題は此処よ」
千歳「ん?」

あきなが指差した場所を千歳が覗きこむ。そこは敵の本隊がある場所から少し離れた場所だったが、味方の兵士が大量に向かいことごとく討ち滅ぼされていた。到底信じられない話だが、遠目に見た伝令兵の話によると敵は一人、しかも女であったという。
まるで悪魔のごとき強さをもつ少女をあきなは一人だけ知っている。そして、それは考えうる限り最悪の事態であった。

あきな「此処にいるのね、零」

会いたいと望んでいた親友。
それでも、今だけはそれを嘘だと思いたかった。


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