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片羽フラクタル
5

零「相も変わらず男前っスね」
白石「零…そっちについとるんか」
零「はい。ま、国王様たちには恩義があれど、国としてのエンティアには興味ありませんから」
白石「伊与たちがおらんエンティアは守る必要がないっちゅーんか」
零「逆に、あると思ってるんスか?蔵之介先輩は」
白石「ある」

白石ははっきりと答えた。この問答では言葉をつまらせてしまえば、自分の戦う意味を失ってしまう。
白石の答えを聞き、零は何処か嬉しそうに笑った。

零「安心しましたよ。なら、蔵之介先輩は自分の意志で此処に居るってことですね」
白石「それを確かめたかったんか」
零「そうっスね。これで心置きなく戦えますよ」

零が武器を構える。漆黒の刀身に狼の牙が混じっている、零の愛刀を本気で向けられるのは初めてであった。

白石「どうしても戦わなあかんのか?」
零「…なに甘えたこと言ってるんスか」

聞き慣れたはずの、それでいて聞いたことがないような冷たい声が戦場に響く。近くに爆弾が落ち、破片を散らしながら爆散した。しかし、その爆発音はどこか遠くのもののように聞こえた。

白石「零…」
零「確かに昔はお世話になりましたケド、此処では過去なんて関係ない」

刀身まで漆黒に染まった唯一無二の零の愛刀『狼牙刀』の切っ先が、ぶれることなく白石の喉元に突きつけられた。切っ先と同じように鋭い黄金の瞳に射抜かれて指先から動けなくなる。少しでも動けばこの狼牙刀に貫かれるだろう、と全身が警告音を鳴らしていた。

零「それが分かっているから此処に居るんでしょ?」
白石「…分かってるで。戦場において俺と自分は敵同士やということは…せやけど…」
零「でももへちまもないっスよ。此処はシンプルで好きだ。戦場において私がすべきことは、殺すか殺されるか。このどちらかだけなんスから」
白石「やっぱり、こうなるんやな」
零「はい。ですから、武器を取って下さいよ蔵ノ介先輩。正々堂々、お互いの命をかけて死合いましょうか」

そう言うと、零は八重歯を覗かせて無邪気に笑った。


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あきゅろす。
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