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片羽フラクタル
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人間というものは、相変わらず争いが好きな生き物だと思う。

世界最大の国土を誇る王都エンティアの直属騎士団に所属する白石蔵ノ介は、戦支度をしながら深い溜息をついた。翡翠色の瞳が憂いを帯びる。白石が騎士団に入団してからおよそ五年の月日が流れたが、仕事が入らなかった日はない。エンティアの国王の欲望は留まることを知らずに、毎日のように他国を蹂躙し領土を広げている。

謙也「白石、準備できたかー?」
白石「すまん。待たせたな」

同じ騎士団所属の忍足謙也がひょっこりと顔を覗かせる。謙也と白石は同時期に騎士団に所属したいわば同期であり、年齢も同じだったことから直ぐに仲良くなった。今では頼れる親友である。
白石は、王都エンティアの紋章が彫られた剣を提げ謙也と並んで外へ向かった。

幸村「そこのお二人さん。これから戦場に赴くのかい?」
白石「幸村君」

騎士団員が集合している中庭に急いでいると、軍師である幸村精市が現れた。

幸村「それなら気をつけるといい」
謙也「そら、戦場では常に気をつけとるけど」
幸村「それはそうだけどね…今回の戦はこれまでとは一味違うようだよ」
白石「違う?どういうことや」
幸村「そうだね…」

すると、幸村は手にしていた本に挟まっていた一枚のカードを白石に手渡した。それは占いで使われるタロットカードであり、そこには塔の絵が描かれていた。

幸村「予期せぬ脅威が襲いかかってくるかもしれない。用心するにこしたことはないよ」

予期せぬ脅威。
戦場では何が起こるか分からない。脅威などいつでもそこらじゅうに転がっている。それでもわざわざ幸村が忠告してきたということは。
受け取ったタロットカードを胸ポケットにしまい、白石はマントを翻した。

白石「…おおきに。気をつけるわ」
幸村「ああ、そうしてくれ」


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あきゅろす。
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