遥か遠い昔のお話です。 我侭な王様は、家来に、孔雀の羽の飾りのついた王冠が欲しい、と言いました。 従順な家来は、そんな王様の為に一際綺麗な孔雀を殺して、 この国一番の仕立て屋に頼んで、王冠を作ってもらいました。 その王冠の出来栄えに感激した王様は、 家来に沢山の金貨と、高い階級と、称号をお授けになりました。 しかし家来は、そのお金を孔雀の墓に遣いました。 家来は、幼い頃に小鳥を飼っていたので、 王冠の為に殺してしまった孔雀を、哀れんだのです。 ある時、家来は、王様の容態が悪くなったのを耳にしたので、早速王室へ向かいました。 すると其処には、顔面蒼白の王様が、 息も絶え絶え、 寝台から家来を見つめていました。 王様に手招きされた家来は、ひゅーひゅーと鳴る咽喉に耳を近付けながら、 一生懸命、声を聴き取りました。 「私はもう、生きてはいられない。夢の中で、真っ白な孔雀に、そう告げられたのだ」 家来が、寝台のすぐ横の窓に眼をやると、一羽の孔雀が、此方を見つめていました。 その瞳は赤く、嘆いているようにも、怒っているようにも見えました。 家来は、この孔雀が、王様の夢に出てきたのだな、と思いました。 王様の口には、沢山の孔雀の羽が生えていました。 その春、家来にめでたく子供ができました。 しかし、その子供の背中には、 孔雀のような、鮮やかな目玉模様がついていました。 [前頁][次頁] [戻る] |