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老木

どこか、広い森で力いっぱい駆けた後、目の前に巨大な老木が聳え立っていた。
其の日は虹が出ていて、少し汗ばむ位の暖かい天気だった。

老木は、幹の周りに他の植物(シダ植物やコケ類)が生い茂っており、其の中央部には
大人でも入れる程の大きさの空洞があった。

僕は小さい頃、この空洞の中に入った事があった。
確か、友達とかくれんぼをした時に隠れる為に入ったのだと思う。

もう一度あの中へ入ってみたいという衝動に駆られた。

気が付いたら、一心不乱に其の太い幹に抱き着く様な格好で登っていた。

空洞まではあっという間に登り着いた。
子供の頃の記憶だと、もっと、とても時間が掛かった様な気がしたのだが・・・。

中はあの頃のままガランとしていて、風がごーごーと鳴っている。
空洞から覗く外の風景は、相変わらず、とても素晴らしかった。


どれ位時間が経ったのだろう。
僕は見知らぬ少年に起こされた。

少年は、「たくや」と名乗っていた。


たくやは此処等の森についてとても詳しい少年だった。
僕のお腹が空いた時なんかには、裸足で勢いよく木を飛び出したかと思うと、
物の数分の内に、沢山の美味しそうな果物や木の実を採って来てくれた。
「有難う」と言って食べる僕の顔を見ては、にこにこと無邪気に笑っていた。

別れ際にたくやは沢山のどんぐりを僕にくれた。

「この木みたいに、立派に育ててあげてね」

家に着くと、直ぐに庭に穴を掘ってどんぐりを埋めた。



いつか、僕が死んでしまっても、お前だけは永く生き続けてくれ
そしていつか
僕の孫が、其のまた子供達がすっぽり入れる様な
大きな穴を用意しておくれ



そんな僕の、名前は「たくや」。


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あきゅろす。
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