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義眼

義眼の僕は、新しい眼を見つける為に、この呪われた地へ足を運んだ。
其処にはボロ布を羽織っただけの老夫婦が住んでおり、
小さい葡萄農園を営んでいた。
老夫婦はこんな僕を哀れむ表情もせず、暖かく迎え入れてくれた。
日が落ちかけて来た頃、其処へ入ると、綺麗に列を成して群生している葡萄が眼に入った。
一際大きい房のものを見つけると直ぐ、一粒だけもぎ取った。
しばらく掌の上で転がし、思い立つと、やさしくゆっくり其の皮を剥いた。
ぷるん、と露(あらわ)になった其の果実は、僕の右目に丁度良かった。
入れた瞬間ひんやりとして、とても心地がよかった。
別れを告げた老人たちの眼には
うっすらと涙が浮かんでいた。


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