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葡萄

ブドウ農家のブドウ畑は今が収穫の時期で
濃い紫色の大きな粒が、瑞々しく熟れている。
其れを無断でもぎ取った私は小さい頃から貧乏で
盗みはほぼ日常だった。
其れが今回はなんとも不運で、
「呪われた地」として有名な土地のブドウだった。
一口食べると、忽ち不快な味に嗚咽を催した。
吐き出した其れはブドウのように緑(あお)くはなく、
真っ赤な血の様な物に濡れていた。
其の赤の間から覗かせる白い地は
私が噛んだ所為で所々形が崩れていたが、
ライチの様な触感で丸々としていた。
不思議と気になったので、もう一度ブドウの皮を剥いてみた。
すると、瞳の様な物が、涙に濡れながら、此方を観ていた。
そして、
心成しか、笑っている様にも見えた。


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