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突然!?
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心配していたものとは異なり、柳平の顔に浮かんでいたのは微笑み以外の何でもなかった。


「いるよ? 同じ学科の連中とか――色々」


歯切れが悪い。
まさか「寿君とか」とでも言い出すつもりだったのではと寿は顔をしかめ、柳平の表情は引きつっていく。


「いや、オレは、連絡、取るつもり、ないんだ、けど」

「先輩――――?」


妙なところで途切れる。
これはおかしいと、眉間の皺を深くした。

そして、ケータイの着信音が響く。
同時に柳平の手が動いた。
『同じ学科の連中』の誰かだろうと表情筋を弛緩させる、


「もしもし?」

『サトアキー!? 今日、大学休講だって! マジウケる!! 今ドコー? どうせヒマでしょー? ウチに来てよー』


が、すぐに戻された。
通話の相手は声が大きく、寿の耳にまで聞こえる。
確かに『同じ学科の連中』なのかもしれないが――女性の声だった。



女性関係を精算したということはつまり、今まで付き合いのあった女性と連絡を取り合えない状態にしたということと同義ではないのだろうか。
いや、まず何故自分が、恋人の浮気現場を目撃してしまったような心境に陥っているのだろうか。
恋人はいたことがないが、恐らくこのような気持ちだろうと考えてしまっているのだろうか。

急に頭が冷えていくのを感じた。


「お前! もう電話するなって言っただろうが!! 聞いてなかったのか!?」

『ハァー? なに言ってんの? バカじゃないの?』

「馬鹿はお前だ!」

『あんた、サトアキでしょ? マジ意味分かんない』

「何だその理由! お前の方が意味分かんない!! そもそもお前誰だ!?」


柳平は確かに、女性との関係を断ち切った――つもりだった。
寿に惚れたから、他の女性とは2度と会うつもりはない。
全員にきっぱりと言い渡し、本人の前でアドレスを消して見せた。

そのときに頬へ平手を受け、全て精算したつもりになっていた。
確かに柳平に熱い一撃を与えた女性は理解した。自分達を切って男に愛を捧げるつもりなのだと。

だが、そうでない女性達は、柳平の冗談として受け取ったのだ。そのために、一方的だったが何度も柳平に電話をし続けていた。
柳平も、その度に事実を説明するので、未登録の電話番号からの通話を受け取る癖がついてしまったのだ。



寿は生暖かい笑みを浮かべ、そっと手を離した。


「無理、しなくて良いんですよ」

「え、ちょ、え!?」

「じゃあ、また」


立ち尽くす柳平を背に、1人でバス停へと歩く。
後ろから、
「お前のせいで誤解されちゃっただろ、オレは寿君以外愛せないってのに! 彼に嫌われたらどうしてくれる!? オレに土下座して謝れ、謝ってくれよバカ!!」
という声が聞こえたような気がしたが、都合良く耳に入らなかったことにした。






























――貴方を信じてない訳じゃないんですよ。
だけど、腹が立つんですよ。

未だに女の人に言い寄られる貴方に。
貴方がまた、女の人のところへ戻るんじゃないかと恐れる自分に。

おれの中で整理できない、整理したくない部分があるので、もう少し待ってください。
貴方に優しくするかどうかは、その後にまた決めますから。

それまでに、今度こそちゃんと、女の人達との関係をゼロにしてくださいね。
一方的にじゃなくて、相手の全員に、貴方のことを諦めさせてください。
過去のこととは言え、貴方が自分でしてしまったことなので、おれは手伝いません。

おれも貴方を待ちますから、貴方もおれを待ってください――


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あきゅろす。
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