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「……僕は、それでも前に、進みます。」
「…あ。」
「…サメラさん。今、部隊長を思ってたでしょう?」
「どうして、そう思うんだ?」
「部隊長とサメラさんの話をしていると、そんな顔をします。」
「どんな顔をしている。私は。」
「思って、不安で、どうしようもなくて心配だって顔に書いてます。」
「…そうか。」

思えば私も丸くなったな。とも言える。昔は、仲間すら信用できないほどの荒みもあったが、今はこうして、家を構え、血のつながらない、紙一枚の書類でも愛を誓うような人間が出来てしまって。すべてになれない。愛にも、家にも、家族にも。こそば痒い何かがサメラの心を縛った。どうしようもない、不安はすべて、愛を知らないから始まるのかも知れない。そう思えて仕方がない。どこかに行かないように縛りつける役職と言う名の鎖も、いわばセシルの家族愛のためのものなのだろうか。すべてが疑わしくなってきた、疑念はすぐには理解できないし、もうどうしようもない。

「なぁ、セオドア。」

私は、ここでやっていけるのだろうか。

伴侶と。
仲間と。
部下と。
片割と。
自分と。

片割れが王ということもあり双子である私も、王族として見られれども、誰も知らない馬の骨、そんな骨が事実近衛兵士団の長という。上が間違ったことを言えば、下は嫌でも応と答えなければいけないだろうに。上が行けと言えば、拒否することもなく下は行くのだろう?。それが、地位も名誉もないただの知らない女と来たら、彼らはどう思うのだろうか。少なくとも、私が普通の兵士であったら、何も思わないが。世界には様々な文化があるし、男尊女卑の村もまだある。むしろ、それが多い。確かにシュトラールは龍騎士団をまとめ上げたと記憶しているが。彼女はハイウインド家を出ている。地位も名誉もある良家のお嬢様ではないか。流れの旅人をしている自分が、そんな地位に就くべきなのだろうか、私よりもっと適切な人間がいるのではないのだろうか、そう思えて仕方がないんだ。

「お前なら、どうする?」
「…僕なら、ですか。」

このまま進むのか、それとも王に立ち向かうか、それとも逃げるのか。選択肢ならさまざまにあるが、

「……僕は、それでも前に、進みます。」





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