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新婚で、夜で、夫がいない。ときて、少年は何をするつもりだ。
ところで少年。
新婚で、夜で、夫がいない。ときて、少年は何をするつもりだ。
じとり、と横目で見ると、顔を真っ赤にして、否定を始める。たしかセシルも、よくこう否定していたな、とクスクス笑った。

「冗談だ、気にするな」
「サメラさん。冗談がひどすぎます!」
「やっぱり親子だな。セシルと同じ表情をするんだな」
「っていうことは、父上と双子のサメラさんも、こんな表情するんですよ!」

そういえば、そうなるのか。と思いながら、自分がどんなときにそんな顔をするのか。ちょっと考えてみた。どんな時だろう。考えてみたが思い浮かばない。返事のないことに不安げにセオドアが名前を呼んだ。

「…サメラさん?」
「どうした?」
「あ、いえ。」
「言いたいことがあったら言っておけ。」

言っておくが、私はもともとのバロン住民でもないんだ、お前が先輩だよ。

「…僕がですか。」
「この間の結婚でようやく無国籍からバロン国民になったんだよ。」
「…え?…」
「お前、聞いてなかったのか?」

てっきり、お前の父母が話しているかと思ったんだが。なんだ、話してないのか。私はな、お前の伯父のゴルベーザもとい、セオドールに捨てられたんだよ。おそらく同じ場所にな。で、魔物に襲われて、私は別の…ダムシアンとファブールの国境に当たるホブス山の近くで育ったんだよ。だから、この国の人間になったのはつい最近のことなんだ。

「え。あの、その。ごめんなさい。」
「知らないのはいいことだ。それを知ろうと言うのはな。」

知らないと、知ろうとしない。は、違う。知ろうとしないのは義務に対する拒否であり、知らないというのは必然的なもので、いづれ知ることだ、恥じることはない。

「ちょっと、説教じみたな」
「サメラさんと、シュトラールさんはよく似てますね」
「…そうか?」
「とても似てますよ。部隊長とサメラとも。さんは」
「師が同じだからな。」

まぁ。それの根源が人間か生き返った人間か。という違いだけさ。と遠い目をして、窓の外を見る。今頃は赤き翼に乗って、ダムシアンに着いたころかな。と思い馳せてみた。





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あきゅろす。
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