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これはまだサメラがバロンに落ち着く前の話。
先の大戦が終わってしばらくたった頃。エドワード・ジェラルダインことエッジは所用でトロイア、ミシディアバロン経由でカイポを通り抜けダムシアンに向かおうとしていた。
キャラバンがいないかと宿の主人に聞くと東の方からダムシアン水脈を通り抜け出る一団が有ると聞いてそちらに向かう。
内密の会談予定なのだが、その旅ついでに師を探していた。エッジの師であるサメラは先の大戦が終わったと同時に姿を消した。何度か探したのだが手がかりすら見つからなかった。
旅を共にした竜騎士も姿を消したが、あれは最近ミシディアの山に籠っているとバロンから情報は来ている。呼び戻せとやたら文を貰ったのは記憶に新しいのだが、そちらはいい、情報すらない師は足取りも掴めていない。辛うじてミシディアの三つ子の一人を歩いているのは得ているのだが、師が出ていくと同時だったと記憶している。子が子をつれて歩くのは目立つはずなのにと思考を巡らせながら、カイポの露店通りを抜けている間に、女の悲鳴を聞いた。ふっと顔をあげれば眼前をなにかが二つ走った。

「泥棒だ!」

誰かがそう言う前に決着がついていた。走っていった方を見つめると日除けのマントをした小さなやつがその泥棒の脳天を獲物で地面に叩きつけたようだ。窃盗犯は痛みに耐えるように這う。エッジはその小さなやつをまじまじと見た。
逃げ出さぬようにその背の上に立ち拘束しつつ、獲物であるロッドを握り自分の手のひらに弄ぶかのように叩きつけている。
マントのしたに風通しのよさそうな衣類をしていて旅人だと推測するが、肌を出さないのて情報は少ないが、よく晴れた朝方の空のような青の瞳は、気だるげな目付きをして、エッジを通りすぎはるか向こうを見ていた。あちらになにかあるのかと疑問に思ったエッジは振り返った。遠くからそれと似た姿をした子どもが通り抜けた。

「もう走っていかないでくださいよー!」

それは、ぷんすか。と聞こえてきそうなほど怒っている子の頭を撫でるために手をのばす。が子に叩かれる。

「ほら、憲兵さん呼んでますから、どうせホールドでもかけてるんでしょう?じゃあ置いてても問題ないですよ!それから、僕のロッドを返してください。」

ほらいきますよサメラさん!
そんな言葉にエッジが驚いて声をあげた。音を聴いてか二対の視線がエッジを見た。気だるげな青はよく見慣れた青がそこにいた。ニッと笑ったその青は勢いよくエッジに魔法を叩き込む。

「慢心か?馬鹿弟子」

そんな言葉と同時に魔法は光を放ち、景色を変えた。街中の喧騒を消して、目の前には砂漠の中の城ダムシアンが立ちはだかっていた。

「あの野郎。近所にいるのはわかってんだっての!」

帰りしなに見つけてやる。砂漠の真ん中でエッジは吠えるのだった。


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