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訓練も雪崩解散になり、サメラはバロンの平野から、城下を通り抜けようとしていた時、露天商から声をかけられた。訝しげに見れば、線の細い男が大荷物を広げていた。






「お姉さん、靴は買っていきませんか?」
「?」

一週間ぐらいバロンでこう商売をしてるんですが、身の上話を商人は語り出した。長そうだなと本能で察知せど、時既に遅し、逃げにくい状況になった。

「前の町では、これが売れてましてね。でも、バロンでは…」

くだらない能書きを聞き流し、手近な商品を手に取った。雑でない丁寧な作りをしている商品に作り手の思いが伺い知れる。

「特別な日に身につけられても、可愛らしくなれると思いますよ」
「……もっと必要な人が出てくる、きっと。」

今は必要ないし…。と一言投げかけて、足早に帰っていった。
露天商には申し訳ないが、情けをかける必要はない。生きるための商売は必ず経験する道だ。心の中で応援しながら帰路につく。

その背後にちらつく影が一つ。






「只今」
「お帰り、カイン」


玄関にサメラが顔を、出せば。はい。と靴を渡された。サメラは奇妙な顔付きで、靴とカインと視線が往復している。

「城下で声をかけられて、話を聞けば、銀の髪の娘が、手にとって見ていたと聞いてな」
「カイン…」

それセシルだ。
確かに声はかけられた、がな、私が手に取って見てたのは、靴でなく、果物だ。

ほら読み返って見ろ、私の名前がどこにある。勝手に城下に出て行きやがって…ただじゃおかねぇ。

シメてくる。と人様に見せれないような顔付きのサメラがゆたりと玄関に出ていきそうだったのをカインが必死になって止めるのであった。

暮れなずむ街で
(落ち着け、サメラ)(今回こそは頭に来た、ホーリーで焼いて(待て待て待て待て!)…喰らいたい?)(それは遠慮する)(なら、手を放せ)(放したらお前はセシルを殴りに行くだろう)(行くよ)(少なくともアイツは国王だし)(国王だからこそ城から出るなと、アレほど言ってるが?)(あ、暗黒はしまえ!)(無理だ)(落ち着け、話せば)(解るかよ、馬鹿)(おいサメラ)(うっさいなぁ、今から私はアイツを殺るんだ!)(殺すな!落ち着け殺すな!)


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