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「確か、こっちに…来たような。」

ふらりとボールの来そうな方向にやってきたのはいいが、見つかる気配がさらさらない。…さて、どうしようかな。と思考を巡らせたら、背後から声が飛んできた。

「ん?竜騎士…?」
「セシルから、頼まれた」
「そうか。」

私はあっちを探すから、そっちを頼むとサメラは迷わず茂みに体を突っ込んだ。

「おいっ」
「なんだ?竜騎士」
「その竜騎士って止めろ。」
「…何故だ?」

私は、少なくともいい感情を抱いてないぞ?セシルやローザは甘いからな。私は違うぞ。最初から刃しか突き立ててないしな。いい感情を持てというのが可笑しな話じゃないか?違うことを言っているか?ぐさりぐさりと突きつけていく刃はカインの心を抉りとっていく。カインはただ沈黙して、サメラの背中を見つめた。
カインが何年も昔からローザだけをみていたのも事実。たかだか二週間程度…カインは更に短い間だが、そんな僅かな期間共にしただけで全てを解られてたまるか。と小さな声でぼやけど、サメラに声を聞こえなかったようで、サメラは「でも、まぁ。」と言葉を足した。

お前のそう思い続ける情熱も、凄いとは思うが。何事もひたむきに誠心誠意向き合うのは、戦う者として敬う部分である。とサメラが、平然と言い放った。

「お前は、そう平然と…」
「あぁ、そうだ。さっき言おうと思ってたんだが、さっきの玉打ち、お前とが一番動きやすかった。案外犬猿の仲って言うのもいいのかもな。」
「玉打ち言うな。はやくボールを探して戻るぞ。」
「はいは…。」

そこでサメラの言葉と動きが止まった。前が歩くのを止めたから、なにかあったのかと伺えば、返ってきた返事は「食ってすぐの運動が悪かった…腹痛だ」の言葉だった。呆れるようにため息をついたのが聞こえた刹那、視界にでかでかとカインが見えた。

「腹痛いならもっと早く言え」
「……」
「竜騎士?」
「ボール諦めて帰るぞ」
「おい、こら、人の話を聞け」
「“竜騎士”って言う名前じゃないからな」

ニヤリと笑うカインにぎゃんぎゃん吠えるサメラの姿は、今も未来も変わらない。変わるとすれば、ここに巨大な魔法があるかないか。というだけだったりする。

犬猿の仲。
(離せっ…カイン!)(はん、こんな時だけ名前で呼ぶんだな)(下ろせ!はやく!)




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