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闇に包まれた次元城の入口あたりに、ぼうっと立っている濃紺の鎧と銀がそこにいた。
「兄さん?」
「サメラか。」
「こっちにカオスが来たって聞いて。」
「…どうする事も出来ん」
「…みんな同じ気持ちなのに、な」
血を分けた家族がこうして集まっているのも、皮肉な縁だ。とサメラはぼやく、兄弟がいて、伴侶が居るこの世界に、敵対する位置に立っているのも、皆同じ思いを抱いているのに。
「…お前は、ここにいていいのか?」
「世界の女神であろう、お前が」
「…気配に敏いエドワードの姉がそこにいるし、その弟もお前の近くに潜んでいるんだろう。必死に牽制している気配はするが?。」
それに、兄さんが攻撃するはずがないと信じてはいるが、必要最低限の距離を明けているのもここに来る条件だったしな。
「好きだ。」
「…私、じゃなくて弟をでしょうに。」
あの兄弟は私の世界から来ていないセシルだしな。知ってても知らないふり。それが、今回の世界のルールだろうが、異端。
吐き捨てて、フンと鼻を鳴らしてやれば、女神らしくもない。との声が帰って来たので、槍を投げて攻撃を加える。
「…ひどい扱いではないかサメラ」
「でも、兄さんが同じ世界からの兄さんで助かった。」
いろいろ、秩序を裏切る秩序側の異端だなんて、私も聞いたことがないがな。と呟くサメラの背後で足音が鳴った。二回は誰かの来る合図。
「じゃ、こっちの異端にも文句言っておくが。言う事はあるか?」
「好きだ。」
「なら、私も好きだ。」
「秩序の女神としてか?」
「…まぁ、な、」
与える者に平等に同じように与えているものだからな。私に愛を囁くならば、私も愛をささやくんだ。終わって帰って、その先で、なら話は別だがな。
「さて、誰か来るし。一旦解散をしましょうか。…まぁ、何かあれば混沌を裏切る秩序を通して、話を持ってきてくださいな。…兄さん。」
「そう言うときだけ、兄と呼ぶのかお前は。」
「身内愛は、一番尊いのだからな。」
兄の日。
(なぁ。サメラ)
(どうした?兄さん)
(…次のリンネで)
(次があるか分からないがな。)
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