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とりあえず、茶で。



「今日も今日とて、また、遅くなってしまったな。」

部屋で眠る伴侶を見て、深いため息をサメラはついた。
毎日申し訳ない。とも思うが、如何せんあの自分の片割れが片付けるべきものをサメラが片付けているのだ。自分の仕事も重なって、どうしようもできなくなってきているのが現状だ。…どうしようかと、思い込んでいるときに、旧友がそっと手土産を持たしてくれて、背中を押してくれたのだ。
こうして、私がセシルと対等に立って放つなんて、思ってもいなかったな。と、苦笑しながら部屋をノックした。

「入るぞ、セシル。」
「あ、いらっしゃい。」

やわらかな笑みを浮かべた、片割れは中世的な笑みと王族らしくない服装でサメラを迎え入れた。というサメラも何時もみたいな鎧も、纏わず簡素なシャツなどを着ているのだが。


「これ、土産。」
「わ、あの子のすごくおいしいんだよね。」
「確かにな。」
「僕が全部食べていい?」
「好きにしろ。」

ケーキの小箱を開ければ氷魔法をまとったホールケーキがセシルとサメラの間に置かれた。照明の光を浴びて氷がプリズムのように反射していく。キラキラと光りを受け流しているのを見て、珍しい魔法だな、とも思った。

「お茶、お砂糖いくつ?。」
「えーと。任せる」
「前に7つ入れてたね。7つ入れとくね」
「…好きにしてくれ。」

受け取った茶を眺めて視線を上げサメラはセシルを見つめた。

「セシル。話があるんだ。」
「仕事量についてでしょ?」
「お前…!」
「ほら、サメラに仕事を覚えてほしいな。っていう兄心というか、なんというか。」
「…私で決めかねる書類も全部…か?」
「え?そんなもの混ざっていた?」

ヘラリと笑っているセシルを睨みつけたが効果はない。
暖簾に腕押し、リルマーダにライブラ。ズ―にレビデト。マラコーダに基礎魔法3種。全然堪えてもない様子だ。

「代筆しておいたが・・・セシル。昔は、お前は一人でこなしていたんだろう?」
「…兄心だよ」
「…もしかして、逃げ回った事を怒っているのか?」

にっこり笑っていたセシルが小首を傾げて、頬に指をあてた。あ、もしかして地雷踏んだかも。なんて思いながらセシルが口を開くのを待った。

「君は、家族が、血族とか言っておきながら、先の戦いが終われば逃げたものね。」
「…私はあの時。お前たちに刃をも向けた。」
「なら、せめて祝典終わってからでもいいんじゃなかったの?」

僕たちに話もせず。どうして、そう自分で決めちゃうのかな?。困ったように笑う彼は、怒りで表情が歪んでいる。…##name_1##は平然とした表情で、あぁ、いや。と相槌を打つしかなかった。

「家族は、幸であり枷でもある。」
「守るものがある人間は強いね。」
「だが、守るものが枷となる。」
「でもね。」

君は世界に逃げだして、僕たちの情報はすぐに手に入っていたけれど。僕たちは君の情報は全然入らないんだよ。不安になる僕らの事も考えた?

「それは・・・。」
「もう。そんな顔しない。サメラ。反省してもうここに、バロンにいるんだもん。」

僕は君がここで、幸せに暮らしてくれるなら僕はそれで十分に満足だよ。ローザが居て、セオドアが居て、サメラが居て、カインが居て。みんなで一緒に笑ってた印だ。
満面の笑みで、そう女たらしの様なセリフを吐く片割れにため息をついた。こいつのこういうところが憎めないんだよなー。と思考に暮れつつ、茶をなめる。

「ね、サメラ」
「ん?…酒臭い…セシル?」
「なぁに?」
「酔ってるだろ?」
「酔ってないよー。」
「誰だ!セシルにアイリッシュティーを渡したのは!」
「サメラ、ちゅー。」
「ちゅーじゃない!こんなのローザに見られたら…!」
「私がどうかしたの?」
「…ローザ…」

顔面の血液がすべて下がって言ったような気がした。

とりあえず、茶で。

(セシル…なにをしてるの?)(いや、実はなローザ!)(この、馬鹿!ホーリー)(…リフレク!)(うぼぉああ!)(すまん、セシル。)(サメラ大丈夫だった?)(一番ローザを怒らせると怖い…あぁ、今後怒らせないようにしよう。うん、)


あきゅろす。
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