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それは、昔懐かしい話。
穏やかな昼下がり、茶を飲みながら、シュトラールは魔道書を読み解いていた。先ほど、陽気に鼻歌を歌いながら着替えて、ファレルさんの所に行ってくると子もりを任されたのであった。家から出る事も出来ずに、魔法を勉強することに専念した。弟は、まだ幼いし、必要があれば呼ぶと言う事を教育しているので、呼ぶ事はあまりないだろう。と判断して、シュトラールは、書を開いた。…刹那。
がしゃーん!派手めな音ともに、誇りがシュトラールの目の前に飛び込んできた。ん?と視線を上げた先を見て、シュトラールの表情が変わった。
「ふごっ!…カイン。あなたと言う人は…!」
よたよたと、歩いてくる自分の弟を見て、シュトラールは茶を吹きだした。目の前に広がる光景に頭を抱えるのであった。
「…姉さまッ…」
ぐすり、と嗚咽を漏らして、カインが駆け寄ってくる。…どういうことだ、と、首を傾げながら瓦礫の山よろしく女児向けの服の山を睨みつけた。
「…ここにね、かあさまが、この間姉さまの写真を片付けてたの見て。」
…それで、私に見せようとしていたのですか?と聞けば、また鼻をすすってこくりと頷く。…仕方ないですね。と考えて、カインと目線を合わす。どうやら、カインはこの山の中のなにかで額を切ったようで、少し赤がながえているのが見えた。
「カイン。額を切ってますね。焔火-homurabi-」
ほわり、と温かな熱をカインの傷口に押しつける。傷口から赤い水は熱により徐々に乾いて、流れを止める。
「姉さますごい!」
「ふふっ。まだお勉強中の魔法ですが、いつかカイン。あなたにもできるようになりますよ」
私の魔法は言霊の力。相手の魔力をも借りて発展する魔法。それは貴方の中の魔力をも借りて発動したのです。貴方も遠い未来で魔法を使えるようになるでしょうね。
柔らかく微笑んでシュトラールはカインの小さな手を握り、その手を包む。
「貴方が、いつか立派な人なりますように。誰かの心を癒しますように。」
「ねえさま?」
「いえ、なにもありません。さて、ここを母上が帰ってくるまでに片付けましょう。カイン、貴方も手伝ってくれますよね。」
やさしいきおく
(な、カイン。)(どうした?)(いや、記憶の整理をしていたらお前の幼少期の女物の服を着た記憶が(おい、今すぐ忘れろ。さっさと忘れろ。今忘れろ!さぁ忘れろ)・・・なんだ?その、忘れろ活用できていない活用)(さっさと忘れろ!)
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