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安眠なんて無いに等しい。
私。サメラ。


それはまだ、私達が。
いや、私が片割れを兄弟と知らない時の話。

試練の山で薪をくべながら、うつらうつらとした心地いいまどろみの中で、サメラはカクンと体が揺れた。

「…!?」
「…サメラ?」
「ん、どうしたセシル。」
「眠たいなら寝ていいよ」

夜の見張りはいつもサメラがやっていた、因みに毎食の準備も、それから日々買い貯めていたコテージの準備も、戦闘も常に戦陣に立っている。線の細いし男顔負けの生活をしていても、彼女も女で人間で。

「というかいつ寝てるの?」
「歩きながら…?」

って寝ろよ。なんてツッコミが聞こえて聞こえてきそうだが、サメラは気にせず水道からカップに水を入れる。…あ、これは完全に起きるつもりだ、とセシルは心のどこかで感づいた。

「返事が無いときは半分寝てる。それとか、船とか。」

安眠なんて無いに等しい。有るとすれば、死ぬときか睡眠薬を飲んだ時だろう。と言うからには、どちらもまだ試して…いやいや、後者はまだしたことがないんだろう。

「寝て、起きて、また昔みたいだったら怖いから寝れない。」
「大丈夫だよ、僕はここにいる。」
「そうだな、セシル。」

…手、繋いでいいか?。控え目な問いにセシルは少し驚く。断る理由目何もないので、いいよ。と細い線が絡み。

「サメラの手暖かいね。」
「セシルが冷たすぎる。それに、さっきまで火の番をしていたんだ、熱いくらいで当然だ。」

平然としながら答える表情に笑みが浮かんだ。無表情を貫く彼女がそんな顔で笑うなんて知らなかった。

「子どもみたいだね」
「そういうセシルの天然さもな。」

言えば放たれる会話に意味がないのは知っているし、彼女が腹を探る可能性は無いに等しいのも知っている。必要な事はもっと真剣な顔をして話す性格だと知っている。微小に折り目正しい正直を突っ走る彼女だからこそ、気を使わなくて済む。

「子ども、と言えば。」

セシルは、子ども、好きか?。やたらとパロムやポロム。それにリディアに懐かれてるみたいだが。パロムやポロムの本来の目的を知っているサメラは言葉を濁しながら、紡いだが、セシルはそれに気付かず、言葉を返した。
子ども、か。あんまりこう関わる機会がなかったからね。親友のお姉さんが僕やローザも、実の兄弟のように構ってくれたから、いつか。

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あきゅろす。
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