「思うがままに。」 ガラス色のダイモーンと赤い髪の女。じりじりにらみ合うで、偽物セーラームーンが登場する。 「…くすっ」 「ちょっと!セーラーエリス、何笑ってんのよ」 「いや、ちょっと。」 ゲラゲラゲラ!ちょっと、面白いんですけど。おなかを抱えてタワーの隅で笑転げる。ネプチューンが大丈夫?なんて声をかけるけれども、そんなのに構っている余裕なんてない。この偽物セーラームーンストレートの部分カールしているんですけどっ!「もーだめ、おなか痛いーっ!」笑い転げている間にも、偽物セーラームーンが「月に変わって、おしおきよ!」なんて。ひーひー言わせないでよ。ゲタゲタ!もーだめ!明日はきっと筋肉痛だ。ちょっと覚悟を決めないと。息を取り戻せたところで、セーラームーンが必殺技を決める。 なんだよ、ラブビームチェーンってさぁ!あー、しんどかった!なんて、思いながら割れた天井を見つめた。ダイモーンがやられた今、残るのは赤い女だけだ。 「ウラヌスたちを助けなきゃ!あたしを助けてくれたもの、悪い人ではないわ。」 「思うがままに」 さっと、身を交わすように、上の階に飛んでいく。二人のセーラー戦士の交戦中だ。迷わず、サンセットライダーを構えて、にらみ合う体制を取り繕う。 「やっと、来たのね、セーラー戦士。」 「さぁ、どうするのいつものように逃げる?」 「何のためにあなたたちを呼び出したと思っているの?」 不敵な笑みを浮かべた女、カオリナイトはバングルから、バイオ液を取り出した。聞く話によると、そのバイオ液は、さっきまでいたダイモーンの力を借りることができるという。面倒だが、相手がどう変わろうと問題ない、サンセットライダーで倒すの。太陽系のセーラー戦士は保護対象なので、全力を持ってお相手してあげる。 だから。サンセットライダー、シールド! 愛武器は、ガラスのかけらを弾き飛ばす大盾となり、傷を増やさず。守る役目を果たす。愛武器に着いたガラスの破片を払って、前を見つめる。 「ここはあたしたちに任せて逃げるのよ!」 「なんだと?」 「二人の目的がタリスマンなら、もうこの場にいる必要はないわ」 「逃がさないと、言ったでしょう!」 カオリナイトが笑う中で、私の頭は段々と冷静になる。迷うことなく引き金を引く。パスンと音を立てて、カオリナイトに銃弾がはじかれた。どいうことだろうか、と思考を走らせる。 「セーラープラネットアタックしかないのね」 「セーラーエリス、あなたにお願いがあるの。」 「なんでもどうぞ、」 「あの、シャッターを壊した、あの技、カオリナイトにぶつけてくれないかしら。」 「思うがままに。」 サンセットライダー! カチャリと安全装置を外して、構える。二度目の披露だ、気にすることなんかない。真新しさも、何も見当たらないし、今はそれどころではない。 ブースト! サンセットライダーの銃口に光が集まり、増出していくのが目に見えて解った。光が最大に集まるのを図って、一気に行動を開始していく。背後で、大量のエナジー放出が感じられた。 セット! なおも低くかがんで、目の前の交戦中のカオリナイトに焦点を合わす。大丈夫だと思えたところで、次の動作にかかる。 ファイア! 迷うことなく引き金をひいた。光の弾丸が、カオリナイトとタキシード男の間を裂いた。 「今よ!」 「セーラープラネットアタック!」 エナジーの塊がカオリナイトにぶつかる。砂煙を撒きあげて、カオリナイトの悲鳴が聞こえた。セーラームーンの息ののむ声が聞こえた。戦わなければ、思考が瞬時に変更され、サンセットライダーを大盾に姿を変えた。パワーを使い切ってしまっては、戦うこともできないのなら、私が守らないと。奥歯をかみしめて、眉根を寄せた。私一人でどうやって戦おうか、どうやって五人も六人も守れるだろうか。大盾を構えて、来るべき攻撃を待った。 「死ねっ!」 「ワールド、シェイキン!」 烈風とともに、波動の球が私の横を通り過ぎて、ガラスの破片も波動球に勢いづかれて、カオリナイトの方向に戻っていく。そして、必然的に、カオリナイトに破片が飛んで、ガラスの中に閉じ込められる。必然的に、身動きのとれなくなったカオリナイトは空から降ってきた、鉄骨と同じように空高くにある東京タワーの展望台から、一気に落ちて行った。 「いたっ。」 破片、刺さったかな。家に帰って手当てしないといけないわね。とため息が漏れた。さぁ、帰ろう。お父さんも帰ってくるし。晩御飯も途中で投げ出したままだ。不思議に思われるわ。私は、気付かれないように、そっと身を隠してサッサと東京タワーから離れた。 [*前へ][次へ#] |