私がエリスが本気を出す日。 「今日ねー。まこちゃんのクラスのはじめちゃんに、お弁当もらったのー!」 おいしかったのよー!ほんと、とけちゃいそうでねー!なんて、うさぎが体をくゆらせながら、幸せそうに、喫茶店で嬉しそうに笑いながら報告する。 「あぁ、不和さんね。ほんと、うさぎちゃんはだれとでも仲良くなれるんだから。」 「不和さんって。まこちゃんのクラスの不和はじめさん?。」 「そう、ほんと、おいしくてねー!まこちゃんに作ってもらいたいんだー!まこちゃんがつくったなら。なんでもおいしいもの!」 「不和さん、ちょっとクラスになじめてない感があるんだよなー。ちょっと前のあたしみたいに。」 メロンソーダを飲みながら、まことがそう、つぶやいた。ほかの戦士も、ふーんと言わんばかりに、話を聴き流した。 「あの子、お母さんが亡くなって。ちょっと感じが変わったかな。」 「あ、はじめちゃんだ!。」 今帰りなんだねー、と、通り過ぎていくのを窓の外を眺めてた。銀の髪を、揺らしてはじめが重い荷物を抱えなおす。 米きれてるんだっけ。残ってた分も、今日のお弁当に入れちゃったわけで、仕方なくスーパーによって帰るはめになった。一度、帰ってからでもいいのだが、着替えてしまうと家から出なくなってしまう性分なのは自分で理解しているので、サッサとよって帰ることにした。 お米と野菜と、あとは魚と、…あれ?なんか増えているけれども、気にしない気にしない。のんびり買い物をして、目的のものを買いあさる。荷物が増えても大丈夫。うん、大丈夫。なんとかなるでしょうね。なんて他人事思考で物事を進めていく。 「不和さん。」 「ん?月野さんじゃない。こんばんわ、買い物?」 「うん。そうなの。ママのおいしいレモンパイのために買い物なの。」 そう、よかったね。食いしん坊さん。とだけ返して、笑いあう。方向はそれなりに同じというのを話し合っていくうちに、解ったことだ。帰宅方向に足を向けていると、悲鳴が聞こえた。 「悲鳴っ!?」 「はじめちゃん、逃げましょ!」 悲鳴に逃げ惑う中で、月野さんとはぐれてしまう。無事だと、いいな。なんて思いながらも、思考は別に走る。はぐれてよかった。なんて思いながら、荷物を公園の隅に置く。昨日の反省を生かして、誰も見ていない事を確認して、愛武器サンセットライダーを呼び起こし変身する。銃刀法違反で捕まるつもりは毛頭ないので人目のないところは重要だ。それはともかく、垣根を飛び越える。ぴょんと飛び越えて公園の中心に飛びこむと、倒れた人とセーラー戦士がうかがえた。セーラー戦士をよけるような軌道で、サンセットライダーの引き金を引く。迷わず飛び出た弾丸が、ダイモーンの眉間を貫いた。ふらつくように倒れて、姿を消した。速く変身を解かないと、月野さんが待っているかも。優しい子だからはぐれた後も探しているかもしれないかもね。と、思考が舞いこんで、そっと踵を返して、荷物を取りに戻ろうかと思った矢先に、声をかけられた。 「あなたは、なにもの?」 「セーラーエリス。それ以上でも、それ以下でもないわ。」 「セーラーエリス…。」 「じゃあね。用事があるの。」 カッカとヒールを鳴らして歩けば、声も聞こえなくなった。 「はじめちゃん。昨日は大丈夫だった?」 「うん、月野さんこそ大丈夫だった?」 「昨日は、はぐれちゃったね、」 「何か事件だったみたい」 「へー。そうだったのね」 事実は知っていても、黙っておいたほうがいいのは、知っている。これは経験則だ。相手が、セーラー戦士でもない限り黙っていたほうがましだ。 「でも、セーラームーンが倒しちゃったんでしょ?」 「みたいだよー。」 「ふーん。なんか、昨日逃げている間にね。知らないセーラー戦士を見たよ」 「どんなどんな!?」 「えっとねー。灰色のスカートだったよ。」 「あたしもみたよ!セーラーエリスでしょ?昨日た…」 「た?」 「見かけただけ!」 戦ったとか、聞こえたような気もするが、言い間違えだろう。きっとそうだ。うん、そうだ。きっとそうだ。うん。ややこしいのには一切合切首を突っ込まない心情をしているあたしには、まったくもって聴き入らない、聴き入りたくないを決め込んで、話を流す。だって、嫌な予感はするんですもの! 「じゃあね、またあとでね!」 「はいはい。」 どうせ、あなたは食べに来るんでしょうから、二つ用意してますよーだ。なんて、いってやるものか。痛んだものは食べさせたくないし、言わないでおこう。彼女が食中毒にでもなられたら、撃ちの家はレッテルを張られるのだろうから。どうでもいいが、っていうかそれはないだろうが。むしろない、いや、有ったら困るんでないはず。必死に行きこんで、心底思った。もうすぐ、六月も終わる。少し暑い日だったような気もする。そんな日に、事件が起きた。そう、六月最後の日。私がエリスが本気を出す日。 [*前へ][次へ#] |