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譲兄に妹たちを頼みこんだのは別の話になる。



「えーい!」

ボールが空を飛んで、きっつい音が鳴ってこっちに飛んでくる。反射的にいつもの癖でサンセットライダーで撃ち落とす。

「あ。」
「もー!はじめちゃん!」
「いつもの癖で、ごめん…。」
「職業病に近いわね、もうそれ。」
「代わりのボール持ってくるね」

そっと輪の中から抜けて、シートの上に置いた荷物を広げる。一応二つ持ってきてよかった。なんて思う。

「…ちびうさちゃん?具合悪いの?」
「頭痛い。」
「頭痛薬あるけど。いる?」

ちなみに私は頭痛持ちだ。
なんか、顔は赤くないし、風邪とはちょっと違うような、もしかしてこの子虫歯か?

「うーん。」
「…ほんと、大丈夫?…ちびうさちゃん、ちょーっと、口を開いてもらっていいかな。」

奇妙な顔をされたが、文句を言わずに口を開いてくれた。歯のかみ合わせ部がちょっと黒い。やっぱり虫歯持ちか。

「水野さーん!手鏡持ってない?」

なんていうのが、話の下りだ。

「そういえば、昴が虫歯持ってたな。歯医者連れて行かないと。」
「なにー。はじめちゃんから男の人の名前が出るなんて!めずらしー。」
「弟よ弟。」
「いくつの弟?」
「…もう、出会いを求めすぎだって。昴はちびうさちゃんと同い年よ。」

六連と同じクラスと言っているんだから、六連と双子の昴はちびうさちゃんと必然的に同じ学年だ。

「あたし、こっちだから。みんなによろしく」

火野さんと別れて、まっすぐ道を歩く。なんか、最近新たな敵が現れたと聞くので、情報収集を兼ねて、デッドムーンサーカスのテント近くを歩く。それなりの話を聞いているので、まぁ、なんとかばれずに探せそうだ。うん。四人の女の子と聞いた、その中の一人でも探せたらもうけものだ。と思いながら私は単独捜査を決める。

「ね、オネエサン。」
「ん?」
「お姉さん遊ぼ?」
「こら、ごめんなさいお姉さん、あのですね。」

呼び止められたから振り向いたそれがいけなかったと、今の私は知らない。

「私たちチケット売りの売り子なんですけど、あんまり売れ行きがよくなくて・・・」
「そう、ならチケットを買えばいいのかしら?」
「それなりに安くはするよ!」
「そうなら、どうしようかな。三枚いただいてもいい?」

勿論妹たちの分だけだ。私はこの間いったもの

「家族分ですの?」
「ううん、妹たちの分だけ。」
「げっ!4人兄弟!?」
「実は7人兄弟。」

うっわああ!と、少女たちが声を荒らげた。なんて人数なんだと。それが普通のリアクションで正しい。このネタを新しい学年の自己紹介ですることはさらさらないが、こういうと普通の周りはよく驚く。

「じゃあお姉さんには4枚あげちゃう!」
「一枚サービスですわ、日の近いチケットですけど、それでもいいですか?」
「構わないよ、サービスだからね、お言葉に甘えて明日来るよ」

結局学校の宿題が終わらなかったので、仕方なく譲兄に妹たちを頼みこんだのは別の話になる。


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