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タイガース(ナルシスト)愛に覚醒した。


またか。なんて思って濡れている体操服を見ないふりして片付けて、体操服を忘れたと言おうと決める。今月二回目は、月末日だったからこれ以上加算されることはないだろう。成績には響くからそろそろやめてくれないかなー。ため息をひとつついて、そっと教室から出ていく。女の子の集団というのはほんと何かと面倒だ。と決めて、教室の後ろの出入口の引き戸に手を駆けた。声をかけられたので、振り返った。げっ、嫌いな高飛車いじめ主犯者とその馬の糞じゃなくって金魚のフンじゃないですか。いつ見ても、傲慢なことで。

「あら、不和さん、今日も体育を休むの?」
「まぁ、ちょっと。」
「不和さん、最近ちょっとあれじゃない?」
「みんなとの、輪を乱しすぎィっていうか〜、調子のんなってかんじっていうかー?」

っていうか〜っじゃなくて、じゃあなんだよ。なんて思いながら、適当な相槌をうつ。どうせあんたたちが体操服濡らしたんでしょうが。なんて、心の端に追い込んで、知らないふりを決める。どうせほっとけばいいこんな、人種。なんて思って、用事があるの、と切り上げて逃げるように教室から飛び出した。面倒事はきらいだ。どこかで誰かが後ろ指をさしているのかは知らない。だからと言って、後ろ指さす奴が人の幸せを勝手に物さして測っていいはずがない。個人の幸せは個人で見つけるのに、誰が不幸で誰が幸福だなんて推し量っても押し付けるものでないと思っている。というか、もう勝手に押し付けるなボケ。とか、言えるものなら行っている。小さく自棄を起こしながら渡り廊下を歩く。

「はじめちゃん。」
「亜美さん。」
「移動教室?」
「亜美さんだなんて、はじめちゃん体育じゃなかった?」
「ちょっと。体操服を忘れちゃって。」

うっかりしてたわ。なんて言えば、はじめちゃんって、しっかりしているのにね。なんて返ってくる。下三人と上二人に挟まれりゃあ、しっかりしているはずなんだが、それとこれとをごっちゃにしてはいけない。それは流しておかなければ。意識を切り替えながら、私次体育館だから、と切り上げるように体育館に逃げるように走る。これは、巻き込んではいけない。うん、知られないように過ごせばいい。どうせ後一年もないのだ。じっと受け流せばいいし、バレたら向こうの心証が下がって高校に行きにくくなるのは目に見えているし、どうでもいい。呆れて私は言葉が出ないのだ。面倒だ。抱えなきゃいけない悩みの種はいつまでも減る気配はなく、むしろ増えていくばかりだ。

「はあ、どうにか誰にも気づかれないように。」

祈るような声色で、向かう先は職員室。今日は、何かと可笑しい気がしてもう、帰ってしまえと思っての行動を取ってしまうのである。私。ちょっと、いやがっつり凹みながら学校から帰る。帰ってもどうせ、家の面倒見ないといけないんだけどね。ぬあああああっ!なんて一人悶絶をしながら学校から出た瞬間だった。…うん。ちょっと待て、落ち着いて考えろ。

「大丈夫かい?」
「…まぁ、」

っていうか、この間の金髪男じゃないですか。うん。どうして現れた!今日は厄日だと思い込んで、思考を押しのけてやる。どうせ、この目の前の男は敵なんだ時間をかけて、どうにかしてやろうと決め込んで、ため息をひとつ。

「すいません、急いでいるんで」
「なっ!?」
「いや、都合悪いんで、じゃっ!」

速足で帰って行くのが悪かったのか、この奴さんに絡まれているのが悪かったのか、いじめがまた悪化していく節目であった。これってあたしのせいなのか?いやいや、奴さんのせいであたしは何にも関係ないよ。っていうか、完全にこれってやっかみじゃないか!抱える頭はまだしばらく上がらない。
「どうして、僕の魅力に虜にならないんだ!」
男は…タイガース・アイはタイガース(ナルシスト)愛に覚醒した。そんな瞬間だった。いつか僕の魅力にくらくらさせやるんだから!なんて言って町影に消えて行った。また後日、仲間のフィッシュ・アイたちに大笑いされているのは、少し後の話だったりする。



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