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中学三年になった。

中学三年になった。
進学とかどうしようなんて、悩む中に不思議な夢を見るようになった。翼をもつ一角獣の夢。きれいな毛並みをした大きなゆったりとした馬の様なそれが毎夜毎夜夢の中を通り過ぎる。おかげで、こっちは寝不足だっつーの。どんなに夢を見れないほどの疲れて寝ても起きる寸前に、一角獣が鳴く。「探して、夢をつなぐ乙女。」って。探せるかぁい!この国の人口がどれほどいると思っているんだ!この国でも一億に近い数居るはずだぞ!?その半分でもおおむね五千人だぞ。どうするんだ、砂漠の中で一つの砂粒を探すようなその願いに、目が回っていつもそこで目を覚ます。頭痛の種は増えていく。どうしろってんだ(最初に戻る)

「もう。どうにかしてくれ!」
「不和さん?」
「ごめんなさい、考えことしていたんです。」

平然と取り繕って頭を抱えてため息ひとつ、となりからまことちゃんの視線が来ても、気にしない。気にしたら負ける様な気がする。

「はじめ。今日、皆既日食があるだろ?みんなで行かないか?」
「いいよ、行くよ。」

楽しみだね。なんて会話をして集合場所をてきぱき決めていく。風に乗って聴きなれない音がやってくる。音の所在地はよくわからないままだ。
家のホワイトボードに皆既日食観覧中とだけ、書いて私は指定された集合場所に一番乗りでやってくる。人がちらほらうかがえる。うん、人おおいなぁ。本当に探してもいいのだろうか。探して見つけてもそれが禁断の箱なら開けてしまう必要なない。探すべきなのか、探さないべきなのか。
第一に自分にメリットがない。どうしようか、と迷っているとみんなが集まった。

「ひさしぶりだなぁ、ぼんやりできるのって。」
「じゃあ、今日は一日骨休めね」
「前のゆっくりする日も、結局流れたしなぁ。」

ゆっくりできるのっていいわね。なんて思考に落ちて、静かに目を閉じた。騒音が止んできた、本格的に始まるのかな。なんて、思ってちろりと目を明けた。結構暗い。明かりのない一日がこんなに暗いなんて思わなかった。たしかにないと不便なのね。と思いはせていると、月に黒点が見えた。静かな影が迫りくるようなひどく怖い夢を一瞬見た。どうも、怖くて、隣のレイちゃんをつかんだ。

「はじめちゃん?」
「…あ、ごめん。日食もうすぐで終わりだよ、きちんと見とかないと後悔するよ。」そっと、指させばそうね、といってレイちゃんがまた太陽に視線を戻す。みんな夢中なんだから、微笑みながらそのあたりを見回せば、さっきまでなかったものが其処にあった。

「サーカステント」

さっきまであったかしら?小さく首をかしげると、深く考え込んでみる。まったく、思い出せず唸りこむ。嫌な予感が走って身震いを起こした。また、ひと悶着ありそうだな。そう、本能が告げてくれる。うん、告げないでほしい。むしろ、告げるな、ともはじめは言いたい。というか、告げてもらっても困る。どう対処しろと。今までもそうだが、これ以上個人で動くのもどうか、考えものだ。頭痛の種がまた増えたのか?ため息ひとつついて草はらに誰もいないのを見て、はじめはうさぎたちの後を追いかけるように走っていく。

「夢をつなぐ乙女。」
「…ん?」

その方向に行くのを憚られた。呼ばれる声に聴いて、走る足が止まった。だれもいないのを見たのに、声が聞こえたのは不思議な話だ。振り返れば、そこに白い馬が一角獣が居た。いやいやいやいやいやいやいやいやいあっやいあいああいあやいああああああああああ!どうしてだよ!今さっき、誰もいなかったジャン!見たよね!今見たよね!眼科!誰か眼科医呼んでぇぇぇえええええ!混乱する頭をよそに、白い馬は語りかける。

「乙女?思考が漏れてます。」
「乙女って言える年齢じゃないよ、考えろよ自分。馬に翅なんか着いている生物はいないよ。どうすりゃあいいんだよ。眼科…って、近所は今日休業…!どうすんだ、俺。ちょっと!ライフカードっぉぉおおおおおお!orz。ちょっと、お医者さーん!って、いないや、医者ーっって、休業ーっ!」
「乙女?」


心配そうな円らな瞳が此方を見た。というか、近い!慌てて距離を取ってみる。どうしたの?なんて言いそうな瞳が、言いにくい。そっと、視線をそらして逃げ出そうとすれば、服の裾を噛まれて動けない。食われるー!おかぁさーん!今そっち行くからねー!なんて大声で叫んでみた。

「どうして逃げるの。乙女」
「おとっ!?」

この一角獣はどうしようもない誑しだと思う。というか、もうどうしようもない。一角獣に正面向いて話を聞く決心をし向かい合う。縛るほど太い腹を縛りつけるように、意気込んでどかりと座り込んだ。顔を寄せてたわむれる。うん、全力投球しないとこっちがやられちゃうね。なんて思考にくれて、全力で相手にする。やらねばこっちがやられるんだもの。仕方ないでしょ?
一体全体なにのようなんですか、この角生えた馬は。向かい合って座ってみると、うん。大きいね。厄介事に首を突っ込んだと同時に後悔を覚えた。やっぱり、逃げたほうがよかったのだろうか、なんて後ろ髪惹かれるような後悔が一気に身を襲う。

「乙女。乙女には、誰かの夢をつなぐ能力がある」
「夢をつなぐ能力?」
「たとえば、誰かの心から望む夢があって、乙女は、夢をつないで、その夢をかなえる力がある。」

乙女は見たことないですか?奇跡の先を。
言われて気付いたのは、この間の戦いだ。彼女が心から誰かを守りたいからと、願いをかなえたのかもしれない。だからこそ、あの戦いを終わらせることができたのかもしれない。

「だから、守って。乙女。誰かの夢を。」

きっと。乙女は、惹かれるんだ。きれいな夢と、運命で。だから、守って僕も。
押し付けるように、翼をもつ一角獣が言葉を残し消えた。
最後の一文はややこしいから聴かなかったことにしたい。なんて思っていたが、サンセットライダーの姿が少し変化しているのを見ると、僕も力を貸すから。と繋がっているようだ。よかった。僕も守って。なんて言われた日には、ほんと後悔だけの日々になるのだから。ちょっと、安心してサンセットライダーを片付ける。

これだけ先延ばしになっての紹介だが、私の相棒サンセットライダーで私は変身する。みんな変身ブローチだとかのほうが軽いし便利そうでいつも羨ましい。うん。銃刀法違反にならないし、警察声をかけられても問題ないものね!なんて思いながらカバンの中に放りこむ。



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