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避けろったろ、避けろよ!当たったらもう、知らねえからな!

「…あら。あの子。月野さんの」

説教二ラウンドは、無理やり家の都合で切り上げたので、とりあえず、また今度ということで流れた。うん。便利だな。と思って、ビニールを握る。
近道の公園を抜けると其処にこの間の少女がいた。セーラー戦士繋がりなのでとりあえず声をかけよう。

「どうかした?」
「女の子は笑ってないと幸せになれないよ」

ちなみに今のは家訓だ。亡くなったお母さんがそう言ってたから、私もそれに素直に従う。お姉ちゃんも妹たちも。ほんと、これのおかげで自分の家は何とかやってこれたのだ。って、とりあえず思っておく。じゃないと平穏に過ごせないもの。って、わたしは思うんだよなー。流される主義のくせにね。とりあえず、笑ってれば全部流していくんだよー。面倒だもの。いいじゃん。適当で。流されていくのだもの、いいじゃない!

「お姉さんは?」
「月野さんや木野さんのお友達のセーラーエリスだよ。」
「はじめちゃんだ!」
「あら、月野さんったら。」

おしゃべりなんだから、なんて、ちょっとため息。おしゃべりと馬鹿は死ななきゃ治らないものね。知っているもの。妹たちがそうなんだもの仕方ないと、割り切っている。というか、割り切らなければどうにもならないんだもの。仕方ないじゃない。そして最後にため息ひとつついて、頭抱える。

「どうしたの?そこまで悩んじゃうなら、誰かに言ったほうがいいよ?月野さんたちに言えないなら、私にでもいいよ」

妹たちが同い年ぐらいなんだもの一人二人増えても構わないって。言えば、女の子は大きな眼に涙ぐむ。泣かした覚えはないぞ。うん。そっと頭をなでれば、泣いて抱きつく。

「あたし、さびしいよ!」
「上辺の言葉はいらないものね。」
「みんな、どうでもいいんでしょ!あたしのことなんか」

邪魔なんでしょう!という言葉が自分の胸に刺さる。形容できないそれがぐっさり刺さっていく。わたしにもそんな時期があった。お母さんは妹たちばかり見て、構ってほしい時期があった。どうしても、見てくれなくて、泣きくれた日もあった。どうしようもない寂しさが襲って、どうにもならなくなって、誰にも言えない時期があった。苦しくて、悲しくて、素直に言えなかった。それが原因だったのかもしれない。

「そんなことない!誰も、必要ないなんてことはない!。」
「でもっ!」
「ゆっくり落ち着いて聴いて。ね、言葉はきついけれども。これも事実だよ。」

私は貴方ではない。だから、私は貴方の思いを聴かなければ解らない。その逆もしかり。貴方は私ではない。だから、貴方の考えを私は見ただけで理解はできない。だから、人間には口がある。手がある。思いを伝えるすべはいくらでもある。

「貴方には、意志を伝える目と、思いを伝えられる口があるでしょう。」

悲しいなら悲しいと、
辛いなら辛いと、
嬉しいならうれしいと。
誰かに言えるでしょう。

友達ができた。
テストで満点が取れた。
一輪車に乗れるようになったとか。
苦手なものが食べれるようになったとか。
喧嘩が出来るような友達が出来たとか。

「思ったことを素直に言えるなら。それは純粋な友達だよ。」

貴方は今、素直に言えたのかしら。それで、言えたら私たちは友達でいいんだよ。そっと頭をなでてやり、彼女は千葉さんの家まで行くようなので、とりあえず近くまで送ってから自分の家に帰宅する。そして、妹のおもちゃになりながら夕御飯の準備をするはめになるが、今晩の晩御飯は空揚げだ。それなら妹たちも言うことをしばらくは聴くだろう。
なんて、思えたが夕飯の入れ替わりを余儀なくされる通信がひとつ。

「はじめちゃん、大変よ、ダイモーンの生き残りが居たの!無限学園後に集合ね」

こっちは揚げ物扱っているんだ!いけるか馬鹿ぁ。揚げ物の生地を冷凍庫の中に入れて、そそくさ準備をはじめる。服のポケットに財布を突っ込んで、ホワイトボードに買い出し。とだけ記して駆け足で家を飛び出す。あぁ、戦士とは四六時中名のかと、ため息をついた。急いで変身をして、現場に到着すると、二体のダイモーンが気ままに暴れていた。というか、一人でどうしろと。というか、セーラー戦士到着遅いっつうの!

青の液体の様な敵とにらみ合いながらサンセットライダーを取り出す。背後で赤のダイモーンが動いたのが理解できた威嚇射撃を行いながら様子をうかがう。

「心を、よこせぇぇぇええ!」
「よこすかってーの」

毒づきながら、待ちなさいっ!なんて声が聞こえるのを待つ。待てど暮らせど来ないのだ。絶対後で、怒鳴ってやると決めて、なんとかにらみ合う中で間を持たせる。とりあえず来たら撃つ…これじゃあどっちが敵なのだか、解らないけれどね。ははっははは!悪役のように笑って見せる。もう自暴自棄だ自棄になってやるんだ!そんな時に、待ち人は来た。いつもの常套句しか聞こえない。いやいや、あんたら月以外も守護しているだろうが。と突っ込みがてらに足元を撃つ。

「ぎゃん!エリスチャンひどい!」
「ひどいのはあんたらのほうだ」

十分もダイモーン二体と相手にさせやがってどこで油売ってやがったんだ!怒鳴りつけて謝罪を貰う。わかりゃあよろしいということで、二分して戦闘を開始する。っていうか待てよ!一対五って可笑しいだろ!もう、誰も突っ込ませてくれないの!ってーか、もう、怒る気力も無くしそうだ。悲鳴が聞こえて、「お前ら五人だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああああ!当たっても知らん!避けろ!」無理難題を押し付けて、構える。ほら、こうなりゃ、私の攻撃の番だ。

「サンセットライダー、ランダムセット、ファイア!」

四方八方に銃弾を一気にぶっ放す。空に銃弾が流れようと、セーラー戦士に当たろうと気にしない。っていうか、これ邪気を払う用の弾だし、人間に当たることなんて…なかったし。大丈夫だよたぶん。大丈夫だよ、たぶん。うん。たぶんね!。避けろったろ、避けろよ!当たったらもう、知らねえからな!やけっぱちになりながら、一気にかたをつける。質で駄目なら、量で勝負すればいいだけだ。
青いダイモーンに脳天に一発風穴があいた。もう後は気にすることはない。

「セーラームーン。速く!」

威嚇射撃を続けて相手の勢いを止めればいいだけだ。呼び声に反応して、セーラームーンの愛用武器を構える。
そして、終わりを迎える。無限学園が、ダイモーンが、いままでのすべてが。
すべての悪夢が、終息を迎えたのであった。

息を吐くように空を見上げれば月に黒点がひとつ。不思議に思って目を擦って再度見ればその黒点も消えている。目の錯覚だったのだろうか。と気のせいにして、考えない事にする。だって、めんどくさいんだもの。

「エリス!よくも撃ってくれたわね」
「避けて、って言ったじゃない」
「よけれるかーっ!」
「大丈夫よ、多分」
「だから、その多分っていう言葉が一番信用ならないんだよ」
「だって、人間にはまだ撃ったことなかったんだもの」
「撃つ気あるんかい!」

五人一斉に言われると、言い返せなくなる。ぐっと、言葉を詰まらせれば。五人一斉に声をあげて笑いだす。なんだ、この奇人の館は。

「もう。じゃーあ、みんな名前呼びにすることね。それでチャラにしてあげる!」
「ふへっ!」
「だって、ねー。ずっと不和さん。じゃあ言いにくいものね。」
「そうそう、いいじゃん。はじめって呼びやすいし。」
「えと、じゃあ。よろしくね。」

なんか、ちょっと頭痛くなってきたのは気のせいかな。うん、なんか、嫌な予感ばっかし。平気かな。ちょこーっと寒気とかするけど、不安だなぁ。高校受験も控える年だし、抱えるものは大きいし、大丈夫だと思うよ。学年トップファイブに入るんだもの。余裕にいけるとおもうけれど。増えるのはため息ばかりだ。来年には妹の一人が中学入りだもの、大丈夫だと思いたいよ!うん。ってか、姉ちゃんも飯作れよ。酒買わねえぞ…。最近口が悪くなったなんて、ひとりしみじみ思う。



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あきゅろす。
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