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重なるのは、前世の記憶。

そう、私たちは異次元の空間に足を踏み込んだ。
気味の悪い空間は何度も体験したことがあるが、ここまで寒気がするのは初めてだと、レイは思う。怪しげな煙を蹴り飛ばすように歩いていけばまっすぐ道をひたすら進んでいく。そういえば、最近不和さんみかけていないな。と思いだすように脳裏に走る。今もどこかで戦っているのだろうか、小さな彼女がこの町の中のダイモーンをつぶしているのだろうか。彼女が何を考えているのかよくわからない。何を思っているのか彼女の思考を読むほどの交流も取れていない。ただ、バタバタしているところから少し離れたところで笑い転げているのしか、まだ、見たことがない。

「悲鳴…!?」
「行こう、みんな。」

急ぎ足が駆け足に変わる。
角を曲がって見えたのはセーラーウラヌスが床に倒れているのだ。

「ウラヌス…!」
「みなさん間に合ったようだな」

聴きなれない声が耳に着いた。冷たい空気の中に邪悪な気配が床を這うようにまとわりつく。視線をそっと上げると、石台の上に寝かされた二つの影を見つけた。見覚えのある其の顔をレイも其処に立つセーラー戦士はよく知っている。

「エリス!ちびムーン!」

呼んで近付いても、強力な結界に阻まれていくことができない。悔しい、仲間がそこで倒れているのに、それも助けることができないなんて。もっと、力があれば、どうにかなったのかもしれないのに。力強く手を握った。怪しげなオーラがちびうさの胸を貫いて、純粋に輝く心を取り出すゆっくりと取り込み沈黙のメシアになり替わる。こんなのってひどい…。隣で叫び続けるセーラームーンが走り寄っても強力な結界は壊れない。

「われはミストレス・9。さぁ、残りの一つを貰おう。」

かつり、かつり。二歩前に歩いて、再び同じようなオーラを放つ、モアモアしたオーラがエリスの胸を貫いた。エリスのは、声をあげずただ歯を食いしばるようなうめき声をあげて、静かな表情に戻り目を開いた。「くりすたる。ちからを…かして」この数メートルでも聴きとりにくいほど微かな声だった。うっすらと開かれた瞳に光はない。おそらく無意識なのか、意志で動いているのだろう、握られていた彼女の愛銃が形を変えて小さな花の水晶になる。

「させるか!」

ミストレス・9の叫びに反応するように光の波があふれ出す。眩しさに顔をそむけていると、「盾。」凛とした声が、いつもの見慣れたシルエットがレイたちと、ミストレス・9の間に立ち、結界にぶつけるように受け流した。

「エリスちゃん」
「結界は壊した…。あとは、すこし、寝かせてくれ。」

ひざから崩れ落ちて行くその姿ほど、懐かしいものはなかった。懐かしいシルバー・ミレニアム時代の薄れゆく温かい記憶だ。

「セーラーエリス。貴方って人は!」

重なるのは、前世の記憶。プリンセス、セーラー戦士をかばって死んでいった瞬間を思い出す。


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あきゅろす。
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