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何を守るために戦うのか知らない癖に。

あの日から、近くの席にひとつ空きができた。その席の主とは仲がいい。まぁ、同じ戦士ってこともあるからか仲良くしている。あの日、ちびうさちゃんの友達、土萠ほたるちゃんの家で起きた事件以来だ。ダイモーンは頑なに教えてくれなかったし、いつも急にいなくなる彼女のことだが、胸の中の嫌なものが払いきれなくて、木野まことはため息をついた。あれから数日が過ぎたが、まったく出席する気配がないのだ、彼女の身に何かあったのだろうか。心配し過ぎで何かなのかもしれないが。

「今日でも、様子を見に行こうかな。」

あと少しで、終礼時間だ、きょうは掃除当番でもないし、集まる予定は入っていない。うさぎちゃんなら何か知っているだろうから、聴いてみよう。ぼんやり授業を聴きながらそう思考が走る。今日、自分たちも動くんだ、それを知らせなければならないし、彼女の身も心配だ。ずっと沈黙を保っている少女だ、重いものを抱えているのかもしれないし、もっとも動けないような事故を起こしているかもしれないのだ。どうすれば、連絡がつくだろうかと考えながらはじめ専用の番号を押すが、呼び出し音のままだ。あんまり、通信機を持っている様子はない。もしかして常時携帯していないのかもしれない。うん、今日にでも聴こうか。

「大丈夫かな……」
「木野さん大丈夫〜?最近、あの子木野さんにべったりじゃない。」
「迷惑じゃなかった?あの子、何考えているかわからないし。」
「結構付き合い悪い子だから、木野さんに依存しちゃうんだろーなーなんて」

同じクラスの三人組女子が声をかけてきた。高飛車なイメージを彷彿させるような女の子だ。猫なで声の様な声で、中心に立つ女は、このまま来ないといいのね。なんて、聞こえた。言っていいことと悪いことがあるだろうに!驚いた声をあげてみると、彼女たちは平然とした顔で、言葉を続けて笑っている。普通じゃない。なんて言葉が出なかった。

「…んなっ!」
「だって、あの子面白くないじゃない。ずっと黙りっぱなしでさぁ。」
「ほぉんと、気持ち悪いんですもの」

高飛車な笑いがまことの鼓膜に届いた。いつも怖がって近寄らない癖に、こういうときに近づいて、人の心を傷つけるようなことだけ言って逃げていく。あんたたちは、あの子の何をしっているんだ。と言えば、黙ってしまう。あの子の喜ぶ顔を知らない癖に、なにを嬉しがっているのか知らない癖に、何を守るために戦うのか知らない癖に、あんたがあの子を傷付けていいなんていいはずがない。何も、言わないからって好き勝手言ってると痛い目見るよ。とだけ残して、まことは自分のカバンをひっ掴んで教室を飛び出した。



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