私はボケ老人と話しているのか。 結果は見事に惨敗だった配下の魔物も無惨にやられ、撤退を余儀無くした。チャンスは何回だって巡ってくるに違いない。まぁ、ゴルベーザに怒られるのは当然だから、シュトラールに聞いて貰ったし、次の任務も決まったようで、シュトラールはいつもの荷物セットを片手にバブイルの塔を眺める。 「チッ、面倒くせェ」 「マラコーダが教えた事じゃないですか戦いは。」 「あいつは、目指す気になりゃあ賢者にもなれるぜ。純粋な魔法しか知らねェしな」 「あぁ、私の魔法が邪道ですから、サメラ嬢も将来楽しみじゃないですか。」 してやったりとした声色にマラコーダはひっそり眉を沈めた。 「…お前の魔法は使いやすい」 「はい?」 「なんでもない。」 「使いやすい、ですかね。」 聞いてなかったのじゃないのかよ、と悪態つきながらも、マラコーダは夜闇を歩く、が、地下世界には、昼も夜も概念がない。 「明るいなぁ。」 「ほら、マラコーダ。危ない」 道を踏み外し赤い海に沈む。だが、マラコーダは地獄の使者熱い寒いは得意なようで赤い海を泳ぎきる。 「なんか、便利」 「だろっ」 「マラコーダ、前!」 何分赤い海は視界が狭く、見えない世界だからこそ、運悪く陸に頭をぶつけ口から泡を吐く。 「バチャバチャ…?」 声を聞いてマラコーダもシュトラールもヤバいと気づいた。聞き覚えのある声は、娘のような元仲間、サメラ・ルドルフのものだ。 「何かいるのか」 なんて水面を覗いているが、残念ながらここは赤い海視界が悪く見えない状況でサメラは目を凝らしている。 「マラコーダ」 「おう」 ゆっくり距離をあけるようにマラコーダはそこから離れて、顔を出す。やはりサメラだと、思い消えゆく背を見送った。 「変わらないですね」 「まぁ。3ヶ月だし」 「ですがね。とりあえずラッキーな拾いものですね」 あははは、笑うシュトラールに思いを馳せながら、マラコーダはまた地に立つ。彼らの行動監視が次の任務だからだ。 傍観と、様子見の任務で先を見て目的を報告する簡単なものだし、予定が分かれば、すぐに魔物を仕向けて留めることもできる。 「ラッキーって?」 「幸運なタイミング、だった。と言うことですよマラコーダ」 「タイミング?」 私はボケ老人と話しているのか、なんてぼやきながらもシュトラールは丁寧に言葉を被せてくれる。 [次へ#] |