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「上官。」
気がつけば、もう、そこに私。マラコーダという個が確立され、ましてや一人歩きして意志を持ち行動していた。言い換えるならば、シュトラールと言う名の記憶が長い眠りに入っていて、先程目を覚ましたような感覚であった。
「どうしたスカルミリョーネ。」
「…ゴルベーザ様が、夜餡だと」
「ありがとう、後で行く。」
すぐさま踵を返して自室に向かう。片付けないといけないことが出来た、今。これは自室で片付けるべきだと理解して中もだんまりを決め込んで自室に滑り込んで口を開く。
「お前は、誰だ?」
「お前こそ誰だ。」
「…私はマラコーダ。ゴルベーザ様の忠実な下部の一。」
「シュトラール。シュトラール・ハイウインドだ。確か私は、龍から落ちて死んだと思っていたが、」
「上司のゴルベーザ様が拾って救命措置としたらしい」
酷い傷だったが故のこのような措置だったと聞いている。運命は小説よりも奇なり。まさか、元の持ち主が表れるなんてな。
「で、お前が主力を持つのか?」
「いらん。死んだ人間が急にふらりと立つのも嫌だろう。年に一二度知り合いを眺めれるだけは、どうにかならないか」
それさえできれぱ私は何も言わないよ。追求するつもりもない、ただこうして中に居させてくれることと年二回知り合いを眺めさせてくれ。
ただ、それだけが私の願いだ。それ以外は勝手にしろと言わんばかりの中身に興味が湧いた。
「居るならいればいい」
「いいか?」
「構わない、バカな奴をみているのは、気が紛れる。時折、話し相手にでもなれ」
「バカな女で良かったらね」白の男と青の女の始まりは意外とあっさりした始まりであった。そんな奇妙な縁が始まったのは、セシルが軍に入隊した年だ。そんなときから、二人、一体と一人の運命な二人三脚が始まった。
「マラコーダ、だったな」
「…シュトラールだったな」
己を確認して、マラコーダは目を閉じた。ずっと戦う。そう自分に言い聞かせて、息づく。
「どうした?マラコーダ」
「なんでもない。」
「お前は、年に何回、誰に会いたいんだ。」
「家族だよ。」
そして沈黙が沸く。沈黙を保ち、小さなため息を一つついた。視線の先に杞憂を浮かべてマラコーダは瞳をとじた。
「家族か。」
私にいるのは、忠実に仕える上司と私に怯える部下だけさ。自嘲するマラコーダの笑い声は機械の轟音にかき消された。
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