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カツリカツリ。
ザクリザクリ。

砂礫の大地を踏みしめて、マラコーダは姿を変えた。
銀糸を揺らす少女がそろりと赤い海に足をつけた。灼熱が心地いいと漏らして、炎のような暑さの中で少女の姿を模したマラコーダは顔色一つ変えること無く赤い水面を波紋立てながら、さも重さがないようにゆたりと歩く。

「奴らは入ったのだろうか。」

水面を揺らして、マラコーダはそこに止まる。赤い水面は煮え立ち、湯気を巻き上げた。赤、黄、暖色が馬を支配するのは、この世界で珍しい事じゃない。地底では、珍しくないだけだが。
思考を巡らせていると、すこしだけ視線が、体全体が落ちた。止まりすぎて、すこしだけ沈んだようだ。

「おっと、止まりすぎた。先回りすっかね」

面倒だといいたげな口振りで、赤い水面から足を抜いて、マラコーダは水面を揺らすことなく走り出した。
水面にちょこりちょこり。と水紋を残し、煮えたぎる赤に跡を残していき、猫のようなしなやかさと、鳥のような身軽さで、赤の海を飛ぶように渡りきる。

赤茶の大地に足をつけて、銀糸をもつ少女の姿をしたマラコーダは、ふわりと髪を揺らしてクスリと笑う。

「さぁ、いつでも来るといいよ。感覚は掴めてきたからね」

ニンマリ笑うマラコーダは、不気味な声をして、赤い世界を離れていく。
ザリ。ザリ。と鳴らして歩く道をマラコーダは目的の場所を見つめ閉じている事を確認した。

「あいつ等はきてない。ならば待つしかないな。」

面倒だと呟いて、扉近くの壁にもたれかかり、目を閉じた。思い浮かぶのは、懐かしい記憶たち。

「カイン。」

シュトラールが、目に入れても痛くないほど大好きな弟の色を思い出す。艶やかな山吹色。黄色やクリーム色に近いそれを思いながら、マラコーダは優しい夢の世界に迷いこむ。

とてもそれは、暖かくて優しい、懐かしい夢だったような気がしたが、それさえも幻なのかもしれない。偽りだらけの世界に包まれながら、マラコーダは嘘を身にまとう。

「ごめん」

誰に謝るのかも解らない寝言は、赤い海に酷くこだまする。

三番目の奇術師-Maniac Replica-の頭。
占探頭者、ルドルフ。

元バロンの竜騎士師団長。
シュトラール。

ゴルベーザの腹心が一。
マラコーダ。

嘘吐きな彼らが見る、
懐かしい夢の終わり。



あきゅろす。
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