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シュトラール女史、ハイウインド当主とよく呼ばれてたが
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夜半、声が聞こえて目が覚めた。懐かしい声だな。…あぁ、ポレンディーナ氏の声だ。口元が弧を描くのが、解って少しして、声をかけた。

「セシルは喜びながら戸惑っておったよ」
「誰か、いるのか?」
「シュトラールさん、なんでもないです」
「産まれた時の話か?セオドア、お前の誕生をルドルフも喜んでいたよ」

ただ、お前の父親がルドルフの捕獲体制に力を入れてたから、遠くからしか眺めてない、みたいだがな。

「そういう話もあったな。ただ、セシルは親の顔を知らずして父親になれるかどうか、恐れていたよ。」
「父さんが…?」
「親もまた子に教わるものもある。」
「親である、生きる意味を。か。」
「そうじゃよ、シュトラール。お前さんも知ってるじゃろう」
「さぁな、親は居ないが弟がいたから、それは知っている。」

だが、私は私を探せないままだ。
落胆したように放てば、お前さんはお前さんじゃよ。なんて返事が来る。

「全て受け売りなんじゃがな、先代バロン王のな」
「先王が、そんな言葉を残したのか。」
「心配するな、ローザやカイン、リディア。みんな居る。」
「地獄がお前たちを、守る。ただ、お前が信用するなら、それに応えてやんよ」
「はい」
「それでこそ赤き翼だ。」

クシャクシャとセオドアの髪を撫でつけて、シュトラールはサッサとテントに戻る旨を言って、テントの中に戻るっていく。

「シュトラール、か。」
「シュトラールさんを知っているんですか?」
「カインの姉と同じ名前だ。」

カインさんにお姉さん居たんですか?とセオドアが放てば、あぁ。と尻すぼみになる。

「だが、お前さんの生まれてくる何十年前に亡くなった奴だ」
「どのような方、だったのですか?」
「まさに子の為に働く、娘じゃったよ。」

セシルやローザも、よく遊びに連れて行ってたりな。三人一緒にシュトラールがよく引っ張り歩いてたさ。
シュトラール女史、ハイウインド当主とよく呼ばれてたが、やはり妬む者も多くてのぉ。怪我は大抵ワシが治療してな。

「懐かしいな」

ぽつり呟くシドの背中が悲しげに語っていた。



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あきゅろす。
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