「人は人であらず。」 サメラはひっそりと、昔の地下水道を歩いてバロン城に侵入して、王の間に向かう中、兵士に見つかった。 幸いに、目深に被ったローブのおかげかサメラがサメラと気付かれてないみたいだ。…が、兵士は、一言あげて槍を高々と突き上げた。 「っ」 条件反射の様にすぐさま対応し、反撃の体制を取る。 「人は人であらず。」 サメラの頬に刀傷が一つ増え、血がたらりと垂れた。目の前の敵を切り伏せても切り伏せても、また立ち上がる。それは、兵としては有能であり、そして名誉である。だが、それは人としての話だ。心臓を刺せども、喉を突けども、目の前の敵は平然と立ち上がる。そうなれば、人であらず、魔物だ。 「この城は、既に…!!」 あの女が落城したのか。一人悪態をついて、今度は縦に真っ二つに裂いた。こうすれば奴らは立ち上がれないだろうと予測しての行動だ。人が居ない事を確認して、サメラはため息をついた。 目の前の肉塊を見て、ここにまともな意志を持つ者などいない。居ても、其人は生ける屍の様な奴だ。 「仕方ない、他を巡るか。」 大きな木の城門を蹴り破り、サメラは静かにバロン城から出て行った。 [*前へ][次へ#] |