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夢のまた夢のような事だ。

「そんなに顔を見つめてどうする。」
「…へ…そんなに、見てたか?」
「穴が空く。」
「すまない。」
「お前のすまない、は、いくらも聞いた。」

すまないは聞き飽きた、異端児。どうしてこんな事が出来ない子供以外、いやお前なんて赤子以外だ。振り上げられる手と、傷だらけの毎日。
悲しくてつらい日々が、ふいに思い浮かぶ。

「……………」
「サメラ。」
「大丈夫、昔を思い出しただけだ。」

十二分に息を吸って平然を取り繕って、カインのもたれる。

「…そうだ、カイン。バロンについたら鎧を返す。借りていたし、傷だらけの鎧になってしまった、すまない。」
「そのままお前が使えばいい、その方が姉さんも浮かばれる」
「なら、そうする」

カシャンカシャンと、鳴る鎧の音が遠くまで鳴り響く。獣がちらほらと伺うが、様子を伺って、また中に消えていく。

「さぁ、これが最後の通過点だ。」
「こればかりは無理だから、先に行けサメラ。」
「ああ、わかった。先に様子を見てくる。待ってるからな」
「確認しだい、追いつくからね。」

ゆっくり下ろされて、光に吸い込まれるように最後の通過点に入る。ふっと浮くと思えば、加速する移動運動。デビルロードの原理はよくわからないが、一つの装置に一回一人、しかも到着してからしばらく待って次の人間が乗れる。手の掛かる装置である。仕方なさげにサメラは勢いに身を任せてバロンに到着する。
埃くさい部屋と、水の音が聞こえる。心地よい音だな、なんて思えば、怒鳴るような、叩きつけるような怒声が飛んだ。

「お前!そんな所で何をしているっ!」
「…いや、ミシディアから…」

身なりを見るとバロンの兵のようだ。

「問答無用、貴様を、牢獄に入獄する。」
「…いや、人の話を…」

話は、バロン国王の帰国後に順に処理をする。その時まで待たれよ、なんて兵が言い切って、サイレスをかけられる。手慣れた様子を見ると、かなりのやり手であろう。サイレスを施されては何もない、学がないサメラにとって文字も書けないので兵と意思疎通なんて夢のまた夢のような事だ。

「ほら、速く歩け」

もう少し、もう少しタイミングが違えば、バロンでの身分が保証されているカインや片割れが来たのに。
沈黙になっても、戦う事が出来るのでとりあえず足技をだせる構えをとって、挑む。




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あきゅろす。
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