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もーまんたい。
亡くなった父を思い出した。

全てを切り替えた私が、扉を開くと母は優雅に茶を嗜んでいた。日没前、この時間はいつも母様のお茶の時間だ。昔からの習慣らしく、この時間はいつもズレた試しがない。

「母様。」
「シュトラールちゃん…決めたのね。」

綺麗なブロンドが揺れる。柔らかな笑顔の下では恐らく全てを悟っているのだ。聡明な母にいつまでも勝てないまま。昔から母は全てを知っているような感じだ。

「カインが竜騎士団に入るまでは、ハイウインドの男になるまでは急措置で。」
「そう。……シュトラールちゃん。最後にお聞きなさい。」

あなたはいつまでも、ハイウインドの娘ですからね。たまには帰っておいでなさい。私の可愛い娘。シュトラール。
優しい声は、昔と変わらず優しいままだ。

「母さん。」
「ええ何かしらシュトラール。」
「陛下の所に行って参ります。」
「そう。行ってらっしゃい。」
「はい。」

結った黒はない。必要ないと全て切り落とした。今、必要なのはハイウインド当主になるべき男、だ。

「それじゃあ行ってきます。」
「たまには帰っていらっしゃい。」

静かに言葉を放ち、シュトラールはバロン城に登城していく。覚悟は決めた、もう振り返らない。

「ねえさま。お城に行くのですか?」
「あぁ。姉は最後だ。」
「ねえさま?」
「じゃあな、カイン。次は―――」

くしゃりと撫でた髪は柔らかで、亡くなった父を思い出した。

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