もーまんたい。
1.セシル。
「セシル。おめでとう」
細く笑う兄弟の姿が現れた。名前を呼ぶ間もなく。その姿が消えた。ただなくて恐怖。
それは最後の別れのように。
「っ!!」
「セシル、大丈夫か?」
「え?」
意識が急浮上して、目が覚めた。今のは夢がと理解すると、向かい側から優しい声が降る。火の番をしていた片翼が心配そうに青の瞳を覗かしてくる。
「魘されてたから、起こしたんだが。」
「うん、ありがとう。」
「昔の夢を見たか?」
うやむやに答えながら、セシルは自分のカップに水を注ぐ。火の横に置かれてた所為か、心地よい暖かさになっていた。
「答えなくても解る。」
それだけ言って、それ以上追求はしない。本人が言いたくないものを追求するつもりはない。
「ねぇ、」
「どうした?」
「怖い夢をみたら、いつもどうしてる?」
「…忘れるために忙しなく動いて、寝るのが怖いから起きておく。」
そして、疲れたころにグッスリ、泥のように眠る。そうしら夢なんか見ない。
沸騰した湯水に茶葉を入れてサメラは一口傾ける。夜は長くて、寂しいからそんな夢をみるんだ。と、片翼が漏らした。その言葉はセシルの耳に届かずセシルは夢へと飛び立った。
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