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記念簿。
かざみさん宅娘さんと。 夜はこれから。 
かざみさん宅の娘さんアルト嬢と
うちの子サメラとニーナのお話。(FF6)


フィガロの夜は寒い。そりゃあ、砂漠だから予想以上に底冷えをする。石畳の風通しのいい城を、カツリカツリ鳴らして歩く女がそこにいた。ぼやきつつ、目的の人物の名を呼んだ。「王様ー。ったく、どこいったんだよ」と、諦めの境地にはいっているような口ぶりは、半ば投げやり。ため息をつきつつ、スパナを手で弄び鉄の冷たさを人肌の温度に暖めながら、よし、とひとつ決意する、

「王様ー。5秒以内に出てこなかったら、スパナでぶん殴る。」

ごー。よーん。とゆっくりカウントダウンをかけていると、テラスの一角に置かれたベンチに見慣れた背中を見つけて、背後から声をかけた。月光色にまみれた、目的は、遠い目をしていたが、こちらに向けて、目を凝らしていた。

「あぁ、君か」
「なにやってんだよ、王様。」
「星を見てたんだ。」

指さされた先に見える満点の星空は盛大なスケールで展開され、昼間の暑さなど知らないような澄んだ砂漠の空気が胸に突き刺さる。

「星なんか、部屋でも見れるだろうが」
「昔、ここからよく観てたんだ。」
「……そうか、」

それは知らなかったと、平然と隣に座り込んで、二人で星を見上げる。…そういえば、と思い出したように、アルトが口を開いた。最近女中たちのうわさでな、この城に幽霊が出るんだとさ。といえば、へぇ。と感嘆とした声が聞こえる。

「…驚かないのか?」
「そんな、非科学的なものはいないさ。そうやっておびえるレディたちも可愛いだろうな。」
「…ムッツリ。」

しれ、っと吐かれる言葉をしれっと吐き返して、隣で鼻の下を伸ばそうとする王様にこっそり踵で踏んで、嫌がらせをひとつ。こんなのが王様で、フィガロは大丈夫だろうか。と考えていると、隣の王様はブツブツつぶやいて、なにやら考えをこぼしている。……本当に大丈夫なのだろうかと、アルトは再考してしまう。

「アルト。その幽霊を探してみないか?」
「…今、居ないって言ったよな。」
「いや、居たら居たで、それを解明すればいいだろう。自分の家を挨拶なくあがり込んでいるのは許せないし、それにレディが困っているんだから、それはどうにかしないと。」

本来の目的は後半だな、と心のそこで、思ってあきれていると、アルト。さぁ、行こうと無理やりつき合わされるのである。

夜はこれから。
(ちょっと、王様。明日も早いんだろうが)(いやいや、レディが怖い思いをしているんだぞアルト。)(ガタン!!)(噂の幽霊……黒のニンゲン?……フィガロには居ないよな、って、王様!?居ねえ!)



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あきゅろす。
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