[携帯モード] [URL送信]
「…おや、おめでとうございます。」

へらりへらり。と戦闘を歩く彼、とも彼女。とも取れない身の振り方をする人間をセシルは睨みつけた。

「ん、どうかしましたかぁ。バロン王、」
「なんでもないよ。気にしないでクラン。」
「気になりますねー気になりますねー」

なんか、こういうやっちゃいますよねを見覚えあるな…。誰だっけ。と、記憶を奮い起こしている間に、前を歩くクランから答えが提示された。

「もしや、バロン王、今、地獄のマラコーダを思い出しませんでしたかな?わたくし、独身…いやいや、読心術が使えるのですよー。」
「マラコーダを知ってるの?」
「なんどかサメラの目の前に立つ魔物。とか、なんとか。サメラ娘に聞きましたよ。」

やれやれ。まて言わんような声色で、クランが呆れを見せた。

「サメラと会ったのかい?、」
「道すがらに、ね。よく私と芸の多様さで勝負して…っと、魔物がいますね。私がなんとかして来ますよ」

ふらり、と軽い足取りでクランは魔物に駆けた。しなやかに手足を伸ばして気のせい枝を掴み、腕の運動でくょりを瞬く間に詰めて、木を蹴り方向を修正して魔物の首根を手刀を叩きつけ魔物を眠らせた。

「種も仕掛けもない力技でございました。」

血の匂いもなくこれならば先に早く参れますね。風に遊ばれる凧のように身をくゆらせ、クランは笑った。

「あら凄いのね。」
「いえいえ、わたくしよりも身の軽いモノは沢山おりますよ、皇后様。」
「クラン、皇后様なんて堅い呼び方は止めてよ、むずがゆいわ。」
「…ではローザ様とお呼びしても。」
「えぇクラン、よろしくね」

私めはお好きにお呼びくださいませ。ぺこり。丁寧すぎる礼を一つして、さてと先に参りましょう。と、場を閉めて、また歩き出す。

へらへら笑いながら。掴めないそれにやきもきするようにセシルは彼の名を呼ぶ。

「クラン」
「バロン王、いかがなされましたか?」
「ちょっとペースが早いかな。」

後ろを指差せば殿は遥か後ろに見える。クランたちが急ぎすぎなのか、殿が遅いのか。とは言いにくいが。

「…おや、おめでとうございます。」
「なにがだいクラン。」
「いえいえ、解らぬならばその時までの楽しみだという事で。」

山頂まで、あとしばらくの話。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!