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「当たり前だろうが。」
水路を抜けてダムシアン砂漠からダムシアン城を見たとき、迂闊にも泣きそうになった。これでわがままに付き合わされなくなる。と思った数十分前の涙を返してほしい。

「…ポーリュシカ」
「お兄ちゃん!」

感動の再開の中、サメラは部屋の隅に居着いた。誰も来てない広々とした謁見の間でポーリュシカとダムシアン王ギルバートのやり取りを見ていた。まぁ彼女が幼い頃に別れてポーリュシカは三番目の奇術師-Maniac Replica-に来て、ようやく。と言うか何というか。

「ポーリュシカ。彼が、団長さんかな?」
「うん、サメラちゃん。」
「サメラ?。」

切れ長の瞳がこちらを見た。約束したろ、おい、このわがまま王女め。と悪態を吐きながら、サメラはローブも仮面も取った。

「久しぶりだな。ギルバート。」
「久しぶりだね。怒ってたよ、彼」
「解ってる。だが、一つ約束してくれ」
「勿論。今までポーリュシカがお世話になってたしね。口ぐらいいくらでも噤むよ。」

柔和で剛直。
そんな印象を与える笑みを見て、助かる。と放ち面を被る。

「いいのかい?心配してたよ。彼ら。」
「それぐらいかけさせてナンボだろ。」

当たり前のように吐き出して、サメラは鼻で笑い、ニッと口角を歪ませた。セシルも可哀想に。とギルバートの言葉を聞かなかった事にして、サメラは言葉を返す。

「部屋の隅でお前たちでも見ておくよ」
「お手柔らかにね」
「お前たち兄弟がポカをしなければな。」

ローブと仮面をしっかりつけてサメラは部屋の隅に置かれた椅子に腰を据えた。

「ねー。怒ってる?」
「当たり前だろうが。」
「むふふー団長ちゃーん。」

はいはい。抱きつかなくていいからすわっとけ。と幼子よろしく。あしらって、サメラは窓の外を見た。

「うわー。そんなもん引き連れて訓なよセシル。」

吐き出した言葉は誰にもかかわらず気付かれることなく空の向こうに消えてった。
サメラの視線の先には、バロンの赤い翼がちらほら。…見つかるとヤバいかもな。だってセシルもローザンヌも居るわけだし。あの二人とやり合っても勝てる気はしない。…勝てた試しがない。全戦全敗…なんか、悲しくなってきた。いや、負けるものか。ひとり悶々としつつ、嫌な未来を察知しながら深い深いため息をはくのであった。



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