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そう呼ぶ人は彼ぐらいですがね。

「今です」
「任せとけ、雷神」
「おうよ、サンダガ!」

まばゆい光を浴びて、クランは武器を呼び出す。機械の能天まで駆け上がり避雷針よろしく、一発放てば、ぐずり。と音を立てて魔物は消えた。居なくなった。

「よっ。やはり、お前も居たんだなセシル。」

いや、塔が光を放ったように見えて来たんだが、正解だったようだな。とエッジはうんうん。頷いた。

「もしかして、この塔を誰か動かしていると、でも。」

小首を傾げながらセシルは聞いた。クランはよく話の成り行きが解らなかったので、仲間にいるはずの緑を探したが、姿が見えなくて何かあったのだろうか。とも考えたが、よくは解らなかった。思考にあけくれると、隣から驚愕の事実を告げてくれた。ありがたい。というのか、くそったれ。と罵ればいいのか解らなかった。

「もしかしてリディアさんが、この塔を?」

あの細腕で動かせる奴がいるならば、こちらが聞きたい。かつてはサメラの兄ゴルベーザでさえ手を焼いたこの党を女の腕で動かせるだろうか。否、無理だ。思考ばかりが巡っていると、周りは次のフロアを探そうと話が進み、クランはエッジに腕を連れられては歩いていた。

「エドワードくん。この腕は離してもらっても」
「オェッ。吐き気がする。」
「シバくぞ。」
「素が出てるぞ。」
「君が喋らなければいいよ。」
「とか言って俺の首を掴むんじゃねぇルドルフ。」

じゃれ合う…否、殴り合いをしながら二人は次のフロアに歩く中、殿にいたセシルは、一つの単語を拾った。「俺の首を掴むんじゃねぇルドルフ。」と。

「ルドルフ?」

それは片割れが呼ばれる名前の一つ。三番目の魔術師-Maniac Replica-の団長の姓でもあるが、彼女が居たキャラバンの、としてもルドルフが二人。呼びにくくて仕方ないだろうに。なら、もしかしてサメラはクランなんじゃないか。とセシルは感じ、クランの背をじっと見つめ動向を伺っているとクランが視線に気付いて殿に下がってきた。

「……どうしましたセシル。」
「なんでもないよ。ね、クラン。君の名字は?」
「私はクラン。ただのクランですよ。」
「エッジは君の事をルドルフと言ったけど。」
「我々皆、団長の姓を名乗るのですよ。」
ややこしいからあまり、そう呼ぶ人は彼ぐらいですがね。とクランは怪しげに笑った。


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あきゅろす。
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