「戦いは食うか食われるか。ですから。」
「戦いは食うか食われるか。ですから。」
クランは乾いた笑いを浮かべながら、そう言葉を付けた。…ついうっかりサメラの素がぽろりとでてしまったことを繕いながら、めり込んだ拳を壁から抜いた。ほんと見つかるのは時間の問題なのかもしれないな。と冷や汗をかきつつサメラは心でぼやいた。
「ほら、言うじゃないですか。」
キマイラは、コカトリスを狩るのだって全力でする。とね。曖昧にはぐらかせながら、クランはケタケタ笑った。
「にしても、私としたことが。」
全力で粉々にするつもりだったんですが失敗しましたねー。思いのほか硬くて、戦闘員何ですけどね。のんびりした口調でおどけて、クランは完全に壁を砕いた。蹴りを一つ放って壁は塵芥に消えた。
「クラン、腕とか痛くないのかい?」
「えぇ痛くないですよ。先に進みましょうか。」
クランが行動を決めると、パロムは嬉しそうに、「俺、一番乗り!」と駆け出した。クランもあらまぁ。なんて言ってると、慌ただしくパロムが帰ってきて大声を放つ。
「リディア姉ちゃんが倒れてる!ポロム早くしろよ!」
「ちょっと二人とも。」
「大丈夫か!」
「もうクランまで。」
ほんとクランってサメラみたいだよね。と隣のシドに笑いかけてみた。が既にシドもクリスタルルームに駆け込んでいった後だった。
「もう。みんなして」
やれやれと呟くように、セシルは肩を落として、歩き出した。土の砂地から、クリスタルみたいな床を声高に鳴らした。
一番後ろを歩くセシルはクランが我先にと言うように走り出すのが気にもなったが、そこまで深く考えずにクリスタルルームに踏み込めば、世界に緑が広がっているのがよく見て取れて、緑を囲むように仲間は立ち、緑から一番遠い場所でクランはクリスタルをただただ見つめていた。
「クリスタル。見たことない?」
「昔にみ…いえ、このように光を放つのですね」
魅入られて手を伸ばしてしまうのもよく解りますね。ふむふむと頷きながらクリスタルを見つめていた。キラキラと光を乱反射する中で、サメラは微かな声を聞き取った。
ミツケタ。
背筋が凍てついたような、何かが耳元を撫でたような気がしてクランは形を震わせた、メッセージを受け取った。
サァ、トウニ。
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