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ジタン・トライバル

みんなと別れたが、前方を横切る姿を見た。なにか逃げてるように見えたので、慌ててジダンは飛び出した。


「レディ!」
「……あ?」
「…サメラ。」

鋭い眼孔で射られてジタンはサメラを呼んだ。誰に対しても(女限定)平等に愛を語る彼が、唯一語れない奇妙な女が目の前にいる。

「どうした、そんなところで。」
「それはこっちの台詞だって、サメラは何をしてるんだ?」

いや、セシルから逃げて来たんだ。あのシスコン。覚えとけよ、あいつ料理出来ない癖にやたらと作りたがる節があるから。だから、ボロボロになりながら、体一つで逃げて来たと。
不可解がようやく理解出来てジタンはホッとしてするすると地に座り込んで息を吐いた。良かった、敵襲じゃなくて、と漏らす。
サメラを上から下まで視線を這わせた。ぴったりとした塗装の剥げた鎧と、ぴったりした汗ばむアンダーが、事態の激しさを物語っている。

「ジタン、寝る。肩貸して」

本人の許可を獲る前にサメラはジタンの肩に頭を乗せて、すやすや寝息を始める。

居た世界では、背の低いサメラは、ジタンよりかはまだ、高い。必然的に体重も乗りかかってくる訳で、体が密着する。
ジタンは、肩の重みを感じてクツクツ笑う。
いつも、ウォーリアのように前を進む彼女が、こうもスヤスヤ寝ているのが珍しく、ジタンはマジマジサメラの顔を見つめた。
銀色の睫と血色悪そうな真っ白の顔なのに唇は妙に赤赤しく、その奥からきれいな白い八重歯が見える。

「…う………ん………セシ、ル……」

形のいい唇から紡がれる別の仲間の名前仕方なさげにため息をついて、「お休み、子猫ちゃん。」ささやくように、ジタンは言葉を放ちサメラの瞼にキスを一つ。

この後は、言わずもがな、追ってきたセシル一向にジタンがボコボコにされたのは言わずもがなの話である。

「ジタン、なにしてるっスか!」
「これはサメラが!」
「……興味ないね」
「とか言いながら見ないでねクラウド。」
「俺も寝る!」
「こら、バッツ!」
「…みんな、ぼくのサメラに何しようとしてるの?」


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