クラウド・ストライフ
「クラウドーォ、動くなっ。上だ!」
バタバタ走る音と悲鳴が飛び交う。その異変に気がついて、クラウドが振り返る。視界一杯の銀が尚近くなって、勢いが走る。
「っと、どうした。」
「バッツとジタンにやられて、チョコボから落とされた。」
幸いに下にクラウドがいたから助かった。と、言葉を繋げて、サメラは静かに俯いた。よく見れば耳まで赤い気がする。…気難しげな表情しか浮かべてない彼女しか見たことが無かったので、少し真新しさがあった。
「なら、いいが。」
「ありがとう。」
ニッコリ笑った…と言いたげだが全く無表情のサメラは、彼女の片割れを彷彿させた。やはり双子だな、と思った。
「クラウド、仕返しにいくぞ。」
「仕返しって、」
「私をチョコボから落とした張本人達だよ。」
なんにせよ片割れは確実にパラディンフォースで拳骨だろうがな、見たくないか?と毒つくように言い切ったが、クラウドには全く想像が出来なかったので、「興味あるね。」と簡素に返事をした。
「よし、メリットの一致だ。行こうクラウド。それからウォーリアも呼ぼう」
彼女は、やられたら倍で返すらしい。
「珍しい女だな」
「そりゃどうも、誉め言葉だと思っておくよ」
打てば響く反応に新鮮さを覚えたクラウドが、バカな女と返す。勿論聞き漏らしなくサメラの鉄拳が飛んだのは、言うまでもない事で、彼女の禁句は、バカ。というらしい、とクラウドは反省して脳内に叩き込んだ。
「クラウド、行くぞ。」
「おい、背中で暴れるな、落とすぞ。」
「…暴れてない、急かしているんだ。」
移動の足が無くなるのは困るから、との判断なのか、サメラはぴったり背中にへばりついた。
最初から素直ならばいいものを。なんて思いながら今日のキャンプ地に向かう足跡が一つ。
「クラウド。」
「どうした?」
「ありがと。」
それから、お前はどこに行くんだ。キャンプ地は逆方向だぞ。苦言を投げてサメラは、今来た道を指差した。
「もしかして、クラウド。」
「何も言うな。」
「あぁ、うん。」
クラウドの一人行動の理由が解った気がする。一人ごちて、クラウド5背中に身をもたげて、静かに目を閉じる。
同時刻、チョコボ一匹だけ帰って来た事にすべてを理解して迅速な行動で兄姉コンプレックスを限りなく発揮したのはまた別の話。
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