GBA編。(完結)
せめて、夢の中では幸せな夢を見れることを祈りながら。
「女ってホント不思議だな」
「…どう、し、た?」
「ほんの二週間前後しか俺たちは知らないのに、知らない仲なのに。」
お前は、こうして涙を流すんだな。
「…こういうのに、は、弱いんだ…ヒック…」
ひとしきり泣いたのか、ごしごしと目をこすって、何もないような表情を一つ。目は赤いし、鼻も赤い、
「擦り過ぎたら、明日にも残るぞ」
「…ほんとか?」
「どうしてうそをつかねばならん!」
「…だって、ふふふ。」
あははははは!カインがそんなことをまじめに言うと思わなかったんだ!と、素面でない顔で、笑って見せた。
赤い鼻と赤い目が、ちょっと悲惨気に見えたが、カインは何も言わず、サメラの手をとって宿に帰って、そのまま寝た。
「明日は、ローザの家に向かうぞ。」
「分かった。…なぁ、竜騎士。お前は悲しくないのか?」
「…悲しいさ、でも、「いや、いい。」おい。」
これ以上聞いても悲しいだけだ。と判断を下し、サメラはそのまま床に就いた。せめて、夢の中では幸せな夢を見れることを祈りながら。
「昨日、誰かに呼ばれた気がしたの、とても優しかったような、でも、誰だかわからないの」
とローザが、ごめんなさいね。と赤い目を揺らした。
「気が付いたら町の北のはずれで、家に帰らないと、って思ったときに。」
「黒い男が現れたわけか。にしても奇妙な事件だな、今までの経緯なら槍での攻撃も可能性の視野に入れてもいいのに、奴は町の南まで逃げて消えた。」
「お前、それで昨日!」
竜騎士が隣で怒声を飛ばした。
「…みんな無事だからいいじゃない!」
「お前なぁ!」
とりあえず、俺たちは昨日の現場に向かう、じゃあな!とカインが強引に腕を引いてローザの家からとびだした。
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