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お前が呑気なだけだセシル!

カインを見送ったサメラは慌てて家の中を片付けてから飛び出した。
因みに窓から人間離れしたように(実際しているが)左の塔から中央の王の執務室に飛び込む。…これは毎朝の事であるし、おそらくこのルートを選択肢に入れるのはサメラだけだ。サメラだけしか出来ない芸等だ。

「セシル、入るぞ。」
「サメラ、また空から?」
「片付けていたからな。」
「掃除婦に頼んだら?」
「いや、いい。」
「せめて、ハウスメイドの一人。」

どうにかならないのかなぁ、と言わんばかりのセシルに、サメラは一人居るからいい。と言い切る。

「サメラのとこにいるのって。」
「ハイウインド付きのエミリー女中だ。」
「そんなエミリー女中が泣きついてくるぐらいだから言ってるんだよ。私の仕事が有りません。って」

ここは、王都で君は、僕の次に、カインと同じぐらい偉いんだから。とセシルの言葉に噛みつくように、言い放つ。それはそれで、これはこれだ。夫婦で居るからこそ、必要なことは沢山あるのじゃないのか?といいたげに、サメラはセシルを睨みつけるように捨て吐く。「職務時間だ、今はそれは置いておけ。それで、本日の予定ですが。」、「今日の予定は?」と聞き返せば、サメラは淡々と言葉を繋いだ。
午前中は書類の確認。昼食を挟みまして、午後はエブラーナからの大使との面会、茶休憩を入れて夕方は、軍議です。決して、脱走なんて考えてないように。と念を押す。この国王、真面目に取り組んでいるかと思えば、書類に落書きをしたりするし、逃げ出すこともしばしば、だからこそ手がかかる。

「今日は午前中は私は訓練だからな!来るなよ!」
「分かってるよサメラは短気だなぁ。」

お前が呑気なだけだセシル!とヒスめいて叫ぶ。いや、怒鳴る。似ている似ていると言われて来たが、今では本当に双子なんだろうか、と、少し脅迫概念に似たそれが迫る。

「じゃあ、失礼する。」

昼にまた来る、とだけ残して、サメラは迷うことなく自隊の訓練所に向かうために、石畳の廊下を歩き出す。
窓から見える空を見上げ、何もなければいいな。と杞憂に暮れながら、サメラはため息をこっそりついた。また、新しい一日が始まるんだ、しっかりしないと、と意気込んで景気よく踵を鳴らした。

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