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サメラ・ハイウインドの朝は早い。

サメラ・ハイウインドの朝は早い。
(いいと言われるが、)朝飯の支度、(夫婦共寝に帰るような家だが)日々の片付け、(枢機卿やらカインたちに怒られるが)国王陛下の日々の仕事の下準備。それから、近衛兵達の育成計画からなんやらなんまで。数え上げると切りがないので数えないが。非常に多枝多様である。そんな多枝多様さは、以前の旅から共にしている者は大概の事を彼女がまとめあげているのは知っている。計画も宿も、飯の管理調達も、なにから何までだ。
話は反れたが、そんな全てを、朝に決めてしまう。決断が早いし、迷う姿はない。
そんなサメラの起床時間を隣のカインは知らない。早く起きてもサメラは必ず支度をしているか、済ましたか。どちらかだ。

「あ、起きたか?」
「賑やかだな。」
「すまない。」

野営と勝手が違うからな。手間取った。と言いながらも朝餡を食卓に広げていくので素直にカインは椅子に座る。

「寝てていいと言ったが」
「私が聞くと思っているのか?」

注意喚起をしているんだといいたげに言えば苦笑を浮かべる始末。どちらも引くことを知らないから譲り合うこともしない。いつものことながらカインが折れるのだ。

「今晩は帰れないから戸締まりをしっかりしろよ」
「カイン、お前」

裏でなんて呼ばれてるか知らないから言ってるんだろうに。竜の鬼なんて、呼ばれる旦那を見て、サメラはかわいそうな飛空挺師団を思いため息をついた。

「食ったらサッサと行け、どうせ出立式典とかやりたいと言ってたから実行に移してるだろうから。早く行って……」

そこで言葉が止まりカインに背中を向けて小さく震える。

「…ば、ば、ばっきゃろう。早よ食って行け!」

噛みながらまくし立ててサメラはサッサと寝室に着替えに入っていった。照れ隠しだ、顔まで赤くなってる。とカインは納得して、そのまま食事を掻き込んでいった。
早く行って、早く帰ってこい。が照れて言えないなんて、意外な一面を見れたな、と少し感慨に入った。

…ガキィン…キィン…

耳に破壊音さえ入って来なければ、可愛いのにな。とカインは苦笑を浮かべながらため息をついた。

「家を傷つけるな!」

何年ローンが残ってると思うんだお前!角部屋戦ったんだからな!と所帯じみた思考を持ってドアを開く

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あきゅろす。
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