[携帯モード] [URL送信]
サメラ・ルドルフ

「エッジさん、セシルさんからお手紙ですわ、はい、どうぞ。」

手渡された紙を開いた。蝋の封はバロンの紋章の形で、蝋の赤も間違いなくバロン国王陛下のものだ。

慣れた手つきで開けると、一筆認められていた。

伴侶、片割れ、そして弟子。
これを読む貴殿、誰かに告ぐ。

バロンで奇妙なことが起きた。
それはおそらく闇の世界に葬られるが故に、書かないでおくが、そんな中で私は私の知らない限られた時間が僅かだった時の為に、誰かに残す。私と言う存在を聞いてしまった以上、申し訳ないのだが覚えていて欲しい。
私の記憶のいくらかを持つシュトラール・ハイウインドが居なくなって、戦いの敗者シュトラールが支払うべき代償の債権が私に回ってきた。きっと、これは仕組まれた事だろうが、私はそんな支払うべき代償の為に、私は消える。

シュトラールの記憶の一欠片が、そう教えてくれた。
だから、はやく向こうの戦争を終わらせる為に、私はゴネず腹括って向こうに渡る。帰る方法はなんとなくしか解らないが、誰かが私という先嘆頭者を忘れないでほしい。必ず帰る、だから、これを読む誰かに告ぐ、私の伴侶、片割れ、そして弟子にこれを見せて欲しい。

覚えろだの、忘れるなだの迷惑な話だが、私がこの世界に帰れる条件がおそらく記憶が頼りであるからこそ、これを読む貴殿が私の道標となるが故に、私は記す。

帰ってこれるか解らないが、伴侶には一言の詫びと、伝言を頼む。
私が帰らなくて、お前が我慢出来ないならば、新たな人と沿い遂げろ。と、何、女は一人じゃない、世界には沢山いる。他の女で幸せになれるなら是非そうしてほしい。馬の骨出身の私には、貴族としての品がなかったとでも、無理やりこじつけといてくれ。
サメラ・ハイウインド、もとい
サメラ・ルドルフ



達筆とは言い難い文字がズラリとそれなり規則正しく並んでいて、サメラの言葉もセシルの筆跡になっていて、文末がルドルフになっている辺りが、こまめな性格のサメラらしい片づけ方だとセシルは思う。

「また、戦いに行ったんだね」
「ルドルフは帰ってくんのかよ。」
「アイツは約束は守るよ、な、セシル」
「うん、僕たちが覚えていたらきっと帰ってくるよ」

闘神様になったんだから。きっと向こうを終わらせてくれるよ。



[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!