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小さな七日間の戦争の1日目が始まる。

夜着に着替えたサメラ明かりがついていても気にせず瞼をつむり、深呼吸を繰り返しうつらうつらしていると、声が掛かって、目を開いた。

「サメラ、明日なんだがな。」
「ん…?」
「赤き翼は、明日の早朝にダムシアンに出立が決まった。」
「復興支援か?」

赤き翼を出してまで、行くのだからそれぐらいしかない。と言わんばかりで、サメラは話の続きを待った。

「なアントリオンはまだ残存しているみたいでな。」
「悉く恐怖の種を摘んでしまおうと言う訳か。」

そうらしい。といいたげなカインが、サメラの腰に手を回した。人肌のぬくもりを感じたサメラが先手を打つように、明日に響く。と釘を打つ。
「しばらく、帰ってこれないからさ。じゃあ、これだけな。」と言って、銀は金に抱えられるように眠る。
…きっとセオドアが見たら、卒倒するんだろうな。なんて思いながら抱き返して、暖かな人肌の匂いに包まれた。

「カイン。帰ってこいよ。」
「言われなくっても帰ってくる。」
「わかってるけれどもね。おやすみ。」
「あぁ、おやすみ。見送らないでいいからな。」

朝早いから。なんて言葉を聞いて、微かに頷いてから、瞼を閉じれば聞こえる息の音に合わせて、呼吸していけば、すぐに眠りの世界に足を踏み入れる。
帰ってくるから、見送らなくていい。それは彼らなりの表現の仕方なので、サメラも何も言わないし、言うつもりはない、意識の途切れる前に、鶏が鳴く声が聞こえたような気がした。


音は無く静かに蠢く影が石畳に伸びる。
この夜から秘密裏に進められた計画は。
すぐさまに終息する戦争となるなんて。
そんな馬鹿げた話を誰が信じるだろう。
終わる幻想の終わる事を知らない物語。
小さな七日間の戦争の1日目が始まる。


愛し合おう。
(せし…そこ…は!)(こいつ、なにの夢を見てるんだ)(バニッシュデスはやめ…うぼぁー。)(…魘されてるようで幸せそうな顔をしているな、変な奴)(…にいさ…カイン。)(どんな夢を見てるんだ?)
(だいすき…ぐががが。)(…寝るか。)
(ぎゃぁ…)(心臓に悪い!)(…うへへへ)(……………)(だいすきぃ……ろ…ざ)(ローザに負けた。)(ふぁい…ア)(寝ぼけて魔法を使うな!)

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