終わりは近く、始まりはすぐそこに。
まるで偶然を装って城の中を歩く。まぁ自分の家であり勤務地であるここは好き勝手歩いても適当に理由をつけられるからころ偶然を装う。
「……ん、カインのとこの」
「ご機嫌いかがでしょう陛下」
「僕は相変わらずだけど、君は」
「陛下に気をかけてくださる程ではございません。」
ピッと姿勢を正して、スカートやらを整える。そんなスカートの隅についた泥汚れをサメラは決して見逃さなかった。
「城下のほうに行ってた?服の裾に泥汚れがついてるよ。」
「え、まぁ。私が管理させていただいている別邸の清掃を。」
別邸は城下街に有るが、別邸に行くまで雨が降った訳でもって、砂利道があるわけでないのをサメラは知っている。
見つけた、と言わんばかりにサメラは…セシルは静かに目を細めた。
「じゃあ、僕は行くね。」
「えぇ、陛下。では、失礼します。」
ちょこんとスカートの橋をつまみバタバタと走り出していくのをみつめて呟く、「きっと奴らはあそこにいるな」と予測はつけた。
これが正しいし、これが正解だが、じゃあ、彼らはなぜそうした?問いつめても答えは出ず、夜闇の生ぬるい風がサメラを包んで、すこし身震いを起こす。
「夜は冷えるね、帰ろうか」
誰かに言い聞かすようにサメラは呟き踵を返す。まだ大丈夫、まだ大丈夫。小さく呟きを漏らしながらサメラは静かに歩き出した。
背中に大きな障気をまといながら、ゆっくりとした足取りで、かつりかつり歩く。孤高を貫く銀色の王は、孤独をも味方につけるような策を得た。
「ならば、私も消えませう?」
「父上」
「セオドア、どうした?」
「母上が呼んでましたよ」
「あぁ、わかった今行く」
平然とした表情は、ゆるやかな風のように優しく浮かべサメラはひどく落ち着いた目をしていた。
「最後はすぐだ。」
髪をかきあげて、サメラは口角を上げて思う。セシルもカインも、帰ってきたら説教だな、と。風邪ひいたかな、なんて思いながらも、サメラは早々と帰宅の途についた。
終わりは近く、始まりはすぐそこに。
(同時刻、)
(くしゅん)(風邪か?)(うーん、どうなんだろ?)(意外とサメラが叫んでたりして)(ちょっとご飯買ってくるね)(気をつけろよセシル)(わかってるよカイン。)
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