あの馬鹿は考えなさそうだが…
「…サメラ、サメラ!」
「ん…」
甘い夢から起こされてサメラはゆるゆる目を開ける。視界は白に包まれて、サメラはなんだこれ?とぼんやり思う。刹那。
くるっぽー!
元気な鳩の鳴き声で、サメラは飛び起きた。「にぎゃぁあ!」という奇声を発すれば、起こしにきたローザがくすくす笑う。
「セシル宛て、だって。」
「…なにが?」
「その子が。」
視線をローザから離して下に向けると、またくるっぽー。と鳴く鳩がいた。
「…はと。」
「そう、伝書鳩。」
機密事項かもしれないから。とだけ残して、ローザは隣の部屋に移る。気を使ってくれたのか、サメラはちょっと胸をなでおろして、鳩から手紙を奪い、開く。
「セシル、三日後、行く。」
読み取れたのはそうかろうじて、だ。もっと語学を勉強するべきだと、今更サメラはがっくりとくる。後悔は今更だし、もう知らないとばかりに自分自身に呆れる。
「三日後?」
何が来るだろうか?ぼんやり考えてみた。…そう言えば、なんかあったような…あ…
「三日後、エッジが来る日ね!久しぶりだわー。」
「…エドワードが…?」
確か、双子に依頼したのが二日前だから、ギリギリ入れ違いになるかならないか、だろうか。上手く伝わっているといいんだが、なんて思いながら、サメラは視線を落とした。
「…一体何をするんだ…バロンで」
「バロンとエブラーナでの輸出入の協定らしいわ。」
「…エブラーナ、という事は舟か。」
嫌な予感がしたが、奴らは忍者だ。海の上だって走れるだろう。
「…ある程度の護衛はつけといてくれよエドワード。」
あの馬鹿は考えなさそうだが…エブラーナの枢機卿がなんとかしてくれるだろう、と投げやって窓の外に鳩を放つ。
「サメラのとこの女中さんね」
「ん…どこだ?」
「ほら、あそこ。」
ローザが窓の外を指差して、そこでエミリーが走って白に向かうのが見えた。もうすぐで城を閉める時間なのに、不思議だなと思いサメラはエミリーを見つめた。こちらに気づかないエミリーは、バタバタ走って城に駆け滑り込むように消えた。
「……ちょっと下に行ってくる…」
「サメラ、なにかあったの?」
「いま、ちょっと思ってな。」
もしかして、なんて考えが頭をよぎって、まさかなんて思ったが事実は案外近い場所にいたのかもしれない。
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